金属売り主、確認厳格化 茨城県警、盗難多発で条例改正提案へ

ケーブルの盗難被害に遭った太陽光発電所(県警提供)

茨城県警は29日、盗んだ金属の換金を防ぐため「県金属くず取扱業に関する条例」の改正案を来年3月の県議会に提案すると発表した。金属価格の高騰を背景に、県内では太陽光発電施設の銅線ケーブルなどが盗まれる被害が相次ぎ、件数は全国ワーストとなっている。条例案では買い取り業者に対し、売り主の本人確認を厳格化する。県警によると、導入されれば全国で初めて。

改正案は、金属の買い取り業者が売り主の身分証を確認することを義務化し、写しを保存する規定を新たに設ける。現行の条例では換金時に業者が売り主の名前や住所を確認したかどうか警察に証明できない上、売り主が虚偽の説明をできる状況にあるという。

罰則は、現行の10万円以下の罰金刑から引き上げ、懲役刑のある古物営業法に準じる方針。

業者資格を持てない対象として、破産者や住居不定者、暴力団員などを追加する。取り扱い許可証の悪用を防ぐため、所在不明の許可者から申し出がない場合、公告後に許可の取り消しが可能となる規定も盛り込む。

県内では太陽光設備のケーブルなどが盗まれる金属盗が相次ぐ。2020年から3年間、年間認知件数の全国ワーストが続く。金属価格が高騰する中、今年10月末時点で全国最多の2167件となり、既に22年1年間の約1.3倍に拡大している。

県警は今月、窃盗罪で実刑判決を受けた40代の男2人が、県西地域を中心に未遂を含む計175件の金属盗などを繰り返していたと発表した。アルミフェンスや銅線ケーブル、工事現場の発電機、橋の銘板など被害は5150点、総額は約7692万円に上り、換金もされていた。

県警はこうした盗品の流通を阻むことで被害を防ごうと、改正案をまとめた。1957年の制定以降、大幅な改正は初めてという。

改正案はパブリックコメント(意見公募)を12月14日から来年1月12日まで実施した上で、3月の県議会に提出し、4月1日公布、10月1日施行を目指す。

県警の担当者は「被害品の売却先があることが問題。売り手の身元をしっかり確認し、不正に持ち込まれない環境をつくりたい」と話している。

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