フェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場に関する調査を実施(2023年)~2022年のフェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場規模は、前年比107.8%の695億100万円、2023年も伸びの勢いは続く見込、更年期分野への注目が集まる~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、フェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場を調査し、国内の参入企業の現況や動向、市場の課題と展望を明らかにした。

1.市場概況

2022年のフェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場は前年比107.8%の695億100万円と推計した。2020年の市場規模は前年比103.5%だったことに比べると、2021年から市場拡大が勢いを増している。2022年は、女性活躍推進法(改正)の全面施行、不妊治療の保険適用といったトピックスがあったほか、内閣府男女共同参画局が公表した「女性版骨太の方針2022」でも「フェムテックの更なる推進」が掲げられるなど、女性の抱える健康課題を解決することへの関心が高まっている。また、フェムテック関連の展示会の開催も活発化した年であった。

近年の同市場の伸長率を見ると、2019~2020年の黎明期はメディアの影響で吸水ショーツや月経カップが注目されたこともあり、生理(月経)分野の成長が著しかった。2021年、2022年は吸水ショーツで大手の参入が相次いだため生理(月経)分野の伸び率が高くなった。ただし、2023年は事業を休止する企業が出るなど、一部で一服感も出てきている。なお、生理(月経)分野ではアプリの活用も普及しているが、一般的な機能は無料で使えるものが多く、認知度は高いがアプリの市場規模は小さい。

一方で、2021年頃から更年期分野への注目度が高まっている。更年期における女性特有の健康課題については、人前で悩みを話すことを生理よりも更にためらう人が多く、また症状が生理のように分かりやすくないため、これまで女性自身も自覚することが少なかった。しかし、同分野は大きな課題として認識されており市場が拡大している。また、ここ数年はメディアの影響で認知も拡大し、政府においても更年期の健康課題を社会的な課題として捉える動きが強まり、サプリメントや漢方、情報提供等の支援サービスの活用が広がっている。

2.注目トピック~全国展開店舗でのフェムケアアイテムの取り扱いが増加~

これまでオンラインや一部の実店舗で主に販売されてきたフェムケアアイテムが、全国展開のバラエティショップ(生活雑貨の販売店等)やドラッグストアに販路を拡大している。吸水ショーツや月経カップ等のフェムケアアイテムの多くは、これまでにない概念のもと誕生した新しい商品である。そのため、消費者には商品の購入前に商品の内容や使い方を充分に理解したいというニーズがあり、店頭での接客販売との相性は良いと考えられる。しかし、実店舗で販売するためには商品の詳細を理解・熟知したスタッフが顧客の問合せに対応する必要があり、特にドラッグストア等では全てのスタッフに対する教育を徹底することが難しいという課題があった。また、他の商品と比べても比較的価格帯が高くなるため、店舗導入に難色が示される場合が多かった。

しかし、フェムテックやフェムケアの概念が女性誌やテレビなどのメディアでも広く普及してきたこと、参入企業各社が協働して消費者へPR活動をしたことが奏功し、2022年後半からは全国展開のドラッグストア等でも「フェムケア・フェムテック売場」が登場し、関連アイテムを1つのコーナーで特集して販売するようになった。スタッフへの教育やPOP等によるプロモーションを強化することで従来の壁を乗り越えつつあるとみる。これにより、これまで商品を試したいという意向があっても購入には至らなかった女性が実際に商品を手に取る機会がもたらされ、商品を知らなかった女性や関心のなかった女性にとっても改めて自身の身体や女性ならではの健康課題に向き合う機会を提供している。

3.将来展望

2023年のフェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場は、前年比107.0%の743億9,100万円を見込む。2021年および2022年と同程度の勢いで市場が拡大するとみる。

フェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場にとって追い風になる動きとして、女性の健康に特化したナショナルセンターの開設がある。2023年8月、政府は女性の健康に特化した国立高度専門医療研究センターを2024年度に開設する方針を固めた。このセンターの役割としては、国内の研究データや成果の共有による開発の進展だけではなく、女性個人に向けた正しい情報提供という意味でも期待されている。

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