「難しい年があると自分のせいなのか、実力がなくなったのかと思う瞬間がある」ハミルトン、自己不信に陥ったことを明かす

 ルイス・ハミルトンは、メルセデスにとって困難で厳しい2023年F1シーズンの間に、自己不信にもがいていたと語った。

 グランプリドライバーとして比類のない成功を収めたにもかかわらず、ハミルトンは彼ですら自信喪失の影響を免れることはできないと認めている。F1での絶え間のないプレッシャーと、メルセデスF1チームのパフォーマンスの苦境が相まって、2023年はハミルトンの復活力と自信が試されることになった。

 2年連続でハミルトンとメルセデスは難しいシーズンを耐えてきたが、チャンピオンのレッドブルには後れを取っている。7度の世界チャンピオンであるハミルトンは、2023年はポールポジションを1回獲得したが、2年連続で未勝利のシーズンを過ごした。

『BBC Sport』スポーツのインタビューで、ハミルトンは今年の苦戦について語ることをためらわず、自分自身に疑問を抱くことがあったと認めた。

「結局のところ、このように難しいシーズンがあると、『自分のせいなのか? マシンのせいなのか? 今も自分には力があるのか? それともなくなってしまったのか?』といつも思ってしまう瞬間がある」とハミルトンは語った。

「なぜならうまくいっていないからだ。魔法がかかって、マシンと自分、そしてあらゆることがよい方向に進んで活気が出たら、それは素晴らしいことだ。それこそ探しているものなんだ」

「僕はただの人間だ。世界の誰かが、そんな目には遭っていないと言ったら、彼らは現実から目をそらしている。僕たちはみんな人間だ」

 今年の夏、厳しいシーズンの最中に、ハミルトンはメルセデスとの契約をさらに2年間延長した。この契約により、ハミルトンは少なくとも40歳の誕生日をとうに過ぎる2025年末までグリッドに残ることになる。さがハミルトンは、人生でそれほど長くレースをすることは当初の計画にはなかったと認めている。

「学ばなければいけないのは、絶対ということはないということだ」

「でもその時点では、続けることになるとは絶対思っていなかった」

「長いシーズンになるよ。誰からも離れて長い時間を過ごす。僕はそれを16年間やってきた。これは過酷だよ」

2023年F1第12戦ハンガリーGP ルイス・ハミルトン&ピーター・ボニントン(メルセデス)

 ハミルトンの最後の勝利は、2021年のサウジアラビアGPまでさかのぼるが、そのことはグリッドに残るという彼の決断をさらに複雑なものにした。

「ここには華やかさ、魅力、ポジティブなことがたくさんあるけれど、ベストな状態を維持し、全力を注ぎ、トレーニングを継続して結果を出すことは決して簡単なことではない。そこには大きなプレッシャーがある。常に見張られていて、僕は人生のなかで勝つ方法がない状況にいる」

「もし僕がレースで勝ったら、『ああ、彼は7度の世界チャンピオンだ。103回目の優勝だ』という感じだ。もしうまくやらなければ……人生のこの時点では負けるしかない」

「だから、こうしたことを経験したいかどうか疑問に思っていた時期があったのは確かだ」

 しかし最後には、ハミルトンのF1に対する揺るぎない情熱が、緊張や困難を凌駕した。

「僕は今もドライビングを愛している。今もマシンに乗り込むのが大好きだ。マシンをスタートさせる。周りにはクルーやみんながいる。ピットレーンを走っていく。そんな時は、初めてドライブしたときと同じように、今も僕の顔には笑顔が浮かんでいる」

「僕のレースパフォーマンスのほとんどはとても優れている。だから、本来あるべきレベルに戻ろうとしているということはうれしいよ」

2023年F1第23戦アブダビGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)

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