腎疾患の新薬候補発見、iPSで病態モデルの作製成功 京都大学など研究グループ

京都大学iPS細胞研究所

 ヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)から、腎疾患の一種「常染色体優位多発性嚢胞腎(ADPKD)」の病態モデルの作製に成功し、新たな治療薬候補を見つけたと京都大学iPS細胞研究所などの研究グループが発表した。早ければ2024年1月にも治療薬候補の治験が始まる見通し。研究成果は米科学誌セル・リポーツに12月1日に掲載される。

 ADPKDは腎臓に液体の詰まった袋(嚢胞)が年齢とともに増えて大きくなり、腎機能が低下する遺伝性疾患。日本では3万人以上の患者がいるとされるが、既存の治療薬は強力な利尿作用があり、多い人で1日8リットルも水分摂取が必要になるなど服用を続けにくかった。

 研究グループは、以前にiPS細胞にADPKDの要因となる遺伝子変異を導入して作成したモデルの培養法を改良。3週間までが限界だった培養期間を10週間以上まで延ばし、腎臓表面に枝分かれして伸びる集合管と、そこから発生した嚢胞の再現に成功。同時に大量生産も可能にした。

 この新しいモデルにさまざまな薬剤を試したところ、既存の白血病治療薬の一つに嚢胞の増加を抑制する効果があることを発見。マウスへの投与でも腎機能の低下などを抑える効果が認められた。白血病治療薬を使った治験を京大発スタートアップ「リジェネフロ」社が2024年1月にもスタートさせる。

 同研究所の長船健二教授は「患者数の多い腎疾患で治療薬候補を見いだせた。既に白血病で使われている分、(承認手順が一部省略されるため)患者に早く届けられると期待している」と話している。

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