炎鵬、3月復帰「見えた」 北國新聞社で意欲

復帰への思いを語る炎鵬=北國新聞社

  ●休場、懸命のリハビリ 引退「1ミリもない」

 頸部(けいぶ)椎間板ヘルニアのため3場所連続で大相撲を全休している元幕内の炎鵬(29)=金沢市出身、宮城野部屋、金沢学院大OB=が30日、北國新聞社を訪れ、炎鵬関石川県後援会長である飛田秀一会長と懇談した。一時は首から下がまひし、医師から「引退勧告」を受ける重症だったが、懸命なリハビリと治療で状態は改善。「引退は1ミリも考えていない。3月の春場所での復帰が見えてきた」と言い切った。

 ファンの間で引退もささやかれる中、金沢入りした足取りは軽く、表情は明るかった。「医師も驚くぐらい首の状態は良くなりました。自分でもびっくりです」。弾む声に確かな手応えがにじんだ。

 「今だから言えますが」と明かしたのは、5月の夏場所中の出来事だった。負けて部屋に戻ると、床に倒れた。全身に力が入らず、手足をバタバタさせた。「他の力士は初めは冗談かと思って笑っていた」。だが、すぐに深刻な状況と分かり、炎鵬は病院に運ばれた。

 2週間の入院中はほぼ寝たきりで、神経が圧迫されて手も握れなかった。医師は「相撲どころか、日常生活もできなくなる」と早急な手術と引退を求め、宮城野親方(元横綱・白鵬)からもそれとなく引退を勧められたが、首を縦に振らなかった。「不安も怖さもなく、絶対に土俵に戻るという思いしかなかった。相撲バカなんですよ」。

 名のある医師や治療家を訪ね、復活への道筋を探って半年。再生治療に加え、ラグビー日本代表選手らの復帰を支えてきたトレーナーの指導によって回復し、年内には対人稽古を再開する。3月場所での復帰について、親方は「無理はするな」と心配しながらも受け入れてくれたという。

 3年前の春場所は最高位の東前頭4枚目。全休続きで十両から幕下、三段目と下げ、3月場所は序二段での再出発となる見込みだが、「入門した頃に戻るだけ」と悲壮感はない。

  ●若手躍進にも発奮

 大の里(津幡町出身)は新入幕濃厚で、欧勝海(同)は十両昇進が決定した。同郷の若手の躍進も復帰へのモチベーションになっている。「(2人と)幕内で対戦したい。1日1日、必死に復帰することだけ考えて生きていた。もうすぐその思いが実る」。力強い視線は、大歓声の土俵をとらえている。

 ■一問一答

  ●目標は「幕内優勝」

 -復帰に不安はないか。

 大学卒業後、入門する時もみんなから「やめとけ」と言われた。無理と言われたら、心に火がつく。医者に引退を勧められたが、「無理なことはないでしょう。大丈夫だと思います」と言った。

 -休場中に感じた相撲への思いは。

 体が小さくて周りは心配するが、無差別級の戦いこそ大相撲の良さ。大学時代、体重別の世界選手権で勝ってもうれしくなかった。あらためて相撲が好きになった。

 -力士からも励まされているのか。

 (同級生の)輝関は優しい。けがをした際もすぐに電話をくれて、ご飯に誘ってくれた。同期の友風関や若隆景関も大けがから復帰していて励みになる。

 -筋力は落ちたか。

 トレーニングでむしろ力がついた。体重も102、103キロをキープしている。

 -これからの目標は。

 たくさんある。三役に幕内優勝。入門時は自分も、厳しいんじゃないかと思っていた。今はそんな不安がなく、当時よりもずっと自信がある。

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