AI「目利き」精度向上 茨城・行方の霞ケ浦産シラウオ ブランド化前進

AI装置を実演する鈴木周也行方市長と三浦亜美社長=東京都港区

茨城県行方市が民間企業と進めている霞ケ浦産シラウオのブランド化事業が軌道に乗り始めた。人工知能(AI)を生かした鮮度判別システムの精度が向上。高級料理店などに販路を広げつつあり、高ランクのシラウオが従来の5倍以上の高値を付けたケースもあった。今後は第三者認証機関設置や鮮度保持の確立を目指す。

シラウオは体長約5~10センチの年魚。茨城県産は全国2位の漁獲量を誇る。しかし、漁業者の高齢化や担い手不足、漁獲量減少など多くの課題を抱える。中でも、シラウオの取引を巡っては、霞ケ浦周辺に淡水魚の市場がないため高品質でも価格に反映しにくく、「低価格のままで取引されている」(鈴木周也行方市長)状況が続いていたという。

このため、市は2021年、AIコンサルティング会社「ima(アイマ)」(東京)などと「霞ケ浦シラウオ×AI」プロジェクトに着手。シラウオの高付加価値化を目指してきた。

シラウオの鮮度判別システムは、プロの漁師たちの知見を数千枚の画像データで蓄積。AIがデータを学習し、鮮度を4段階にランク付けする仕組み。

ランクごとに価格を設定することで、販路拡大に加え単価も上昇。既に都内9カ所の高級料理店で取引に結び付いており、一部では従来の5倍以上の値を付ける高評価を得たという。

市と同社は30日、都内のホテルで会見し、これらの実績を報告。今後はAIの精度をさらに上げるとともに、第三者認証機関「ブランドセンター」設置、シラウオの季節別の名称登録、鮮度保持法の確立などを進める考えを示した。

アイマの三浦亜美社長は「買い取り価格は上がり、確実に収入は上がっている」とプロジェクトの手応えを語った。今後は認証制度を霞ケ浦全体に広げ、シラウオ以外でも活用させたい考えという。

市は、霞ケ浦沿岸の漁業が漁獲量頼みから脱却し、限られた水産資源で安定した収益を生む「少量高価格」漁業への転換を図りたい考え。

鈴木市長は「価値ある魚が適正価格で扱われるようになり、限りある水資源を有効活用したい」と強調。漁師の目利きとAI技術を掛け合わせることで「若い世代の漁師が期待を持てる水産業に再構築したい」と意気込んだ。

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