アニメ『葬送のフリーレン』想いを“口にする”シュタルクの誕生日エピソードにファン感涙 SNSに祝福の“手作りハンバーグ”相次ぐ 

11月24日放送のアニメ『葬送のフリーレン』第12話では、ヒンメルと〈勇者の剣(つるぎ)〉に秘められた驚きの過去が明かされた一方で、戦士シュタルクの少年時代にもスポットが当てられた。これまで家族からさえ“誕生日プレゼント”をもらったことがないシュタルクは、かつて故郷を捨てて逃げ出してしまった過去を悔やみながら「家族から愛されていなかったんだろう」と語る。しかしフェルンとフリーレンがプレゼントを選んでくれるなかで、シュタルクは家族の、そして師・アイゼンの温かな想いに気づくのだった……。悲しい過去が明かされながらも確かな愛情を感じられた今回のエピソードを受け、 SNSには感動の声とともに劇中の1シーンを再現するファンが続出。“大きな手作りハンバーグ”の投稿が相次いだ。

(以下、アニメ最新話までのネタバレを含みます)

◆誕生日のプレゼントは…

勇者ヒンメルの死去から29年後。“一級魔法使い”の資格を取得するため魔法都市オイサーストを目指すフリーレンたちは、道中の街で久々の休息に羽をのばしていた。シュタルクがひとり“街ぶら”へ赴くなか、宿に残った女性陣。鏡の前のフェルンが念入りに髪を手入れしていると、ベッドで魔導書を読みふけっていたフリーレンが思い出したように告げる。「そうだ。今日はシュタルクの18歳の誕生日だから」。

「なんでそういうこと事前に教えてくれないんですか」。何も用意していないとぼやくフェルンを尻目にフリーレンは、意気揚々とベッドから飛び出し“ガラクタ”だらけのかばんを開く。自分だけプレゼントを準備していた彼女は「とっておきだよ?」と、何やら液体の入った紫色のビンを取り出した。その正体はなんと〈服だけを溶かす薬〉。「男ってのはね、こういうの渡しておけば喜ぶんだよ。先生に教わったんだ」としたり顔のフリーレンに、フェルンはこれでもかと言うほど冷たい目を向ける。

怒りのあまり、フリーレンから薬を奪ったフェルンは、その中身を彼女にぶちまけて部屋を飛び出した。ひとり残された“裸”のフリーレンは、「プレゼントどうするかな」とかばんの中身を改める。どこかで拾ったような松ぼっくり、変わった装飾の万年筆、意味深な銀の指輪……。そのなかでフリーレンは「これがあったか」と、一枚の“メモ書き”を手にするのだった。

「男はこういうのを喜ぶ」と教えてくれた“先生”とは、きっと大魔法使いフランメのことだろう

シュタルクを探しに街へ出たフェルンは、「オノを背負った戦士様に助けてもらった」という話を至るところで聞く。ある女性は「荷車を押すのを手伝ってくれてね」と感謝し、子どもたちは「さっきまで俺たちと遊んでたぜ」と笑う。夕焼けが顔をのぞかせる頃、フェルンはようやくシュタルクを見つけた。これといった贈り物が思いつかないフェルンはいっそ本人に聞いてしまおうと決めるが、誕生日プレゼントは何が欲しいかと尋ねると意外な反応が返ってきた。「それ(誕生日)と欲しいものになんの関係があるんだ?」。

かみ合わない会話をいぶかしむフェルン。事情を聞くと、なんとシュタルクは誕生日プレゼントをもらったことが一度もないという。「死んだ故郷の家族からも師匠からももらったことがないから、そういうもんなのかと思っていた」と、シュタルクはさも当たり前のことであるかのように笑った。彼の故郷の風習だろうか?疑問を浮かべるフェルンを見て、シュタルクは少し寂しそうにうつむく。「単に俺が大事にされていなかったんだろうな」。過去を思い出すうち、その表情は段々と陰りを帯びていく。しかしふと、シュタルクがぽつりとつぶやいた。「そういえば、兄貴だけは違ったかもな……」

故郷の家族を思うシュタルク その表情が物語る過去とは……

◆“最強の戦士”の素顔

シュタルクの故郷は“戦士の村”だった。弱き者に居場所はなく、強き者には惜しげもない賞賛が浴びせられる、そんな強さだけが価値を生む村だった。幼き日のシュタルクも毎日修行に励んでいたが、なかなか結果は出ない。まだ一度も魔物とまともに戦えていない彼を、実の父親は「失敗作」とさげすんでいた。

そんな“戦士の村”で「最強の証」を手にしていたのが、シュタルクの兄・シュトルツだった。純白のマントを羽織って戦う村の戦士たちのなかで、シュトルツはただひとり、ケガどころか返り血ひとつ泥ひとつさえ跳ねていない。そして打ち倒した魔物を見下ろすその表情には、勝利の笑みすら浮かばなかった。シュタルクを見下した父親だが、シュトルツだけは誇りに思っていた。

ある日のこと。相も変わらず真っ白なマントをなびかせ魔物退治から戻ってきたシュトルツと父親は、ひとり鍛錬を続けるシュタルクを見かける。木刀を手に、修行用の木彫り人形の前で目をつむるその姿に、父親は「雨が降ってきた」とさっさと帰路に着いてしまう。そんなことはつゆ知らず、シュタルクは「ふっ!」と木刀を打ち込む。その一撃は木彫り人形に弾かれると、地面のぬかるみへ。剣先の向こうに誰かの足元を見つけ顔を上げたシュタルクは、驚きのあまり言葉を失った。そこには真っ白なマントに泥をつけられた、この村最強の戦士が立っていた。

……だが、シュトルツは笑った。「いい集中力だ」と、自身の腰ほどの高さにある弟の頭を撫でる。「お前はきっと強くなる。でも少し構えが悪いな」。冷徹な父親のもとで育った“最強の戦士”は、ぬかるみのあるその場に膝をつく。しんしんと降る雨のなか頑張る弟に、マントを汚しながら優しく手ほどきするのだった。

“最強の戦士”シュトルツ その面立ちはシュタルクとよく似ている

◆“言葉にしなかった想い” “口にした想い”

「兄貴だけは違ったかもな」。そう言ってシュタルクは優しき兄の姿を思い出した。だがそれゆえに、ある過去の出来事をひどく後悔していた。それは“戦士の村”が魔族に襲われた時のこと。巨大なオノを持った2本角の魔族、燃え盛る炎、そして勇敢に戦うシュトルツたちの背中……。幼き日のシュタルクはその全てから目を背け、ひとり逃げ出した。脳裏に浮かぶ暗い過去にシュタルクは、「家族から祝ってもらえなくて当然かもな。俺は逃げてばかりの失敗作だ」とつぶやく。

「過去なんて関係ありません」。フェルンは真っ向から言った。巨大な紅鏡竜と相対した時も、アウラ配下の魔族たちと戦った時も、「自分の見てきた戦士シュタルクは一度たりとも逃げていない」とフェルンは語る。それでもなお「この先逃げるかもしれねえぞ」とうつむくシュタルクに、彼女はそっと微笑んで「私たちが逃しません」と答えるのだった。観念したシュタルクはフェルンと共に“プレゼント”を選ぶ。フリーレンが待つ宿への帰り道、その左腕には銀色のブレスレットが輝いていた。

「おかえり。遅かったね」。2人を出迎えたフリーレンの手にはなぜか、大皿に乗り切らんばかりの巨大なハンバーグがあった。フェルンが状況を飲み込めずにいる一方、シュタルクは「誕生日といったらこれだろ」と大喜び。なんでも、プレゼントはくれなかった師・アイゼンもハンバーグだけは欠かさず焼いてくれたと言うのだ。そんなシュタルクの反応に何かを察したフリーレンは、「アイゼンから聞いてないの?」と尋ねる。「何が?」という返答に、フリーレンはやれやれと肩を落とす。「私も不器用だから分かる。想いっていうのは言葉にしないと伝わらないのに」。そう言って彼女は、誕生日にハンバーグを焼く、その理由を明かし始めた。

実は、戦士アイゼンが故郷とする地方には、“精一杯頑張った戦士を労う“贈り物として特大のハンバーグを振る舞う風習があった。シュタルクの誕生日のたびにアイゼンが焼いていたそのハンバーグは、彼にとっての誕生日プレゼントのようなものだったのだ。フリーレンの話を聞いてシュタルクは、辛い過去の中に一縷(いちる)の光を思い出す。「親父たちには内緒だぜ」。そう言って、自身の誕生日にハンバーグを焼いてくれた兄・シュトルツの笑顔を……。「アイゼンからレシピをもらったんだよね」と笑うフリーレンの手には、“ガラクタ”だらけのカバンにあったメモ書き。プレゼントはとっくにもらっていたのだ。シュタルクは、特大のハンバーグをそっと“口”にする。そして不器用な師匠や兄が“言葉”にしなかった想いを、一口一口かみ締めるのだった。

ハンバーグの由縁をシュタルクに明かさなかったアイゼン(右)を、フリーレンは「不器用だね」と振り返った(画像は第1話より引用)

◆SNSにはファンからも祝福の“手作りハンバーグ”が

シュタルクの悲しくも温かな過去が明かされた第12話。父親に“失敗作”の烙印(らくいん)を押されたシュタルクに唯一優しく接していた兄・シュトルツの姿、そして兄弟のきずなにファンからは「別れのシーンで涙が溢れた」「最強にエモくて最高に好き」と多くの感動の声が上がった。

また、ハンバーグに込められた“アイゼンの想い“をフリーレンが代わりに明かすシーンも話題に。「不器用な人間の優しさは響く」「想いのつながりが泣ける」と絶賛する声が上がったほか、SNS上では作中同様に巨大なハンバーグを作って写真を投稿するファンが相次いだ。

街で休息したフリーレン一行は、 “一級魔法使い”の資格取得を目指し、再び北の魔法都市オイサーストへと向かう。『葬送のフリーレン』第13話「同族嫌悪」は、12月1日(金)よる11時「FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)」(全国30局ネット)にて放送予定。

画像提供:©山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

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