ホストクラブの“売掛払い”問題の本質とは? 禁止すれば解決するのか…元ホスト城咲仁を交え、徹底議論

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜6:59~)。11月15日(水)放送の「激論サミット」のコーナーでは、昨今問題視されている“ホストクラブの売掛払い(ツケ払い)”に関して、元ホストでタレントの城咲仁さんを交えて議論しました。

◆ホストクラブの"ツケ払い”は規制すべき?

昨今、ホストクラブに通う女性たちによる犯罪が世間を騒がせています。さらに社会問題化している"立ちんぼ女子”もホストクラブ代を稼ぐ目的の女性が目立ちます。

こうした現状からホストクラブの"売掛払い”について規制を求める声が顕在化。

売掛払いとは、いわゆる"ツケ払い”のことで飲食代金を後払いすることです。ただ、回収不能となった場合、担当ホストがお客に代わって支払うことを義務付けている店舗があったり、お客側の過剰な借金額など、売掛は以前から問題視されていました。そして、最近では東京都の小池知事、さらには国会でも取り上げられ、議論は本格化しています。

この問題に関して、かつて歌舞伎町で5年間NO,1ホストとして活躍した城咲さんは「僕はこの件について怒っているのではなく、呆れている。ホストにもお客さんにも。登場人物の全てに」と素直な思いを吐露。

城咲さんの現役時代、ホストクラブはあくまで「飲み屋」。しかし、今は「推し活をするところ」とホストクラブのあり方の変容を示唆。というのも、かつては後々しっかり払える人のみ売掛をしていましたが、今はお金のない子に売掛をさせて「お金を作ってこい」と強要するホストがおり、それが問題だと指摘します。ただ、それも全てのホストが行っているわけではなく、やっているのはごく一部と城咲さんは強調。

◆隆盛と衰退を繰り返すホストクラブの変遷

1990年代、編集者をしていた頃に作家の接待として、クラブやキャバクラ、ゲイバー、ホストクラブなど夜の店を何度も利用したことや店舗取材をしたことがあるという獨協大学特任教授の深澤真紀さんは、1970年代から今に至るまでのホストクラブの歴史をかいつまんで話しつつ、ホストクラブの問題点を挙げていきます。

まずは「初回だけ安く楽しませる制度」。そして、特に大きな問題としていたのは「永久指名制度」。ホストクラブは一度指名すると変えられず、これが揉める原因のひとつだそう。また、「ランキング制度」も問題で、ホストはトップに立つためにお客さんに負担を強いることもしばしば。こうした問題が1990年代に露呈。

その後、石原慎太郎都政が"歌舞伎町浄化作戦”を敢行。風営法も改正され、歌舞伎町の夜の街が一変。ホストクラブもしばし落ち着いていたものの、ここ数年で再び変化が。その発端はSNSで集客化できるようになったこと、成人年齢が引き下がり、18歳・19歳から売掛が取り消せなくなったり、トー横キッズの台頭などさまざまな要因でホストクラブも大きく変化し、訪れる女性が増加。人気が再燃しているそうです。

深澤さんの一連の話に城咲さんは同意。なかでも歌舞伎町浄化作戦の影響は大きかったそうで「あれで変わってしまった。(ホストクラブは)衰退してしまった」と回顧。

その最大の理由は、深夜営業ができなくなったからで、それによりお客さんの質が低下。「例えば、以前は銀座のクラブなどで飲んで、アフターでホストクラブに行っていた。なぜなら、女の子を誘いやすいから。だから、お金を持った大人の男性が(ホストクラブに)来ていた。そして、銀座のママなども出入りするから、ホストも清潔感があり、しゃべりもできたし、鍛えられた」と城咲さん。

◆売掛は規制すべき? 必要・反対、双方の意見は?

現状としては売掛を巡り、さまざまなトラブルが起きています。例えば、女性客の借金が増え、支払い不能に。そうなると、その女性客がサラ金や闇金で借金をし、反社会的勢力が売掛金を回収しに来たり、さらには売掛金を払えない女性客が売春や詐欺などに手を染めてしまったり、事件・裁判・自殺に発展するケースも増えています。

城咲さんは、「いつの時代も悪いホスト、悪いお客さんがいるが、今は秩序がない」と嘆く場面も。その秩序を作る上でもホストクラブでの売掛は規制すべきなのか。コメンテーター陣に聞いてみると、法律事務所ZeLoの弁護士・由井恒輝さんと深澤さんは「必要」。キャスターの堀潤と元裁判官で国際弁護士の八代英輝さんは「不要」。そして、城咲さんは「半々」と回答。

まず由井さんは必要とした理由に「飲食店ならクレカでいい」とクレジットカードの存在を挙げます。「売掛は必要ない。クレカを使えばいい。(クレジットカードが)使えない人は(ホストクラブに)行ってはいけない。信用がないんだから。(クレジットカードで)上限を決める。そもそもホストクラブは高すぎる」と毅然とした態度で語ります。

同じく必要とした深澤さんは「ホストと客間の売掛には制限をかけること」を提案。売掛自体は江戸時代からある商習慣で根本的には悪いものではないものの、最大の問題は「ホストが売掛の責任を持つようになったこと」と指摘します。

一方、反対とした堀は、ホストクラブそのものではなく、売掛を回収するためのシステムを問題視。そこを改善、健全化し、「より良い仕組みを導入するべき」と主張します。

同じく不要とした八代さんは、現状の売掛問題も「現行法で対応可能」と言います。「例えば、消費者契約法のデート商法に引っかかるものもあるし、払えないような売掛は公序良俗違反など。(売掛に困って)本当に助けてほしい人に司法の手は差し伸べられるが、城咲さんが言ったように今のホストの問題は『推し活』になっている。助けてあげてもまた(ホストの元に)戻ってしまうのではないか。そこが問題」と法でできることとそれだけでは対処できない場合を精査。

そして、唯一半々とした城咲さんは、ホスト側にも問題があるものの「払うお客様にも問題がある」と指摘。キャッシングローンに審査があるように、お客も責任感を持つべく売掛の際には審査の必要性を訴え、深澤さんの意見と同様で、ホスト自身に売掛の全責任を持たせるのではなく、店舗として責任を担うことを勧めます。

ホストの売掛問題に関しては、歌舞伎町を主管する新宿区の議会でも議論になり、日本維新の会・新宿区議団の古畑まさのり幹事長は売掛を禁止する条例の申し入れをしています。

そこで古畑さんに話を聞いてみると、「今回の申し入れはホストクラブを潰すためのものではない。ホストクラブ自体はしっかりと楽しめる場であると認識している」としつつ、「個人が支払える能力のなかで遊ぶ分には大いにやっていただきたいが、自分の支払い能力を超えてしまい、望まぬ性的サービスなどをしないと返せないような売掛金を抱えてしまうことが問題ではないか、何か手を打っていかなければと考えている」と申し入れをした理由を説明。

一方で、売掛金禁止には多くのハードルがあることも理解しているとし、例えばいかに対象店舗を絞っていくのか。また、売掛金も広義に捉えるとクレジットカードも該当してしまうため、それを新宿で禁止とすることは現実的ではないなど、多くの問題点を抱えるなか、何が最も得策なのかメリット・デメリットを考えながら検討していくべきとしています。

実際、売掛を規制する上での懸念点は多数あり、例えば規制が他の業種にも影響し、混乱する可能性があること。ホスト業のみ禁止とした場合、法の下の平等・営業の自由などに反すること。そして、ホスト業の定義が曖昧であることや規制逃れ、手口の巧妙化。さらには、個人間の貸与までは規制できないため、実態がより分かりにくくなってしまうのではないかという問題もあります。

◆ホストクラブの問題を解決するためには?

では、ホストクラブにおける売掛トラブルを解消するためにどうすればいいのか。城咲さんが打開策として挙げたのは、夜の街で働く人々に証明書、例えば"ナイトワークID”を設けること。まずは歌舞伎町浄化作戦で禁止したホストクラブの一番の稼ぎどきである深夜営業を復活させることで経営を安定化させ、さらには働く環境を整える代わりにホストクラブなど夜の仕事に従事する人全員を行政が管理できるよう登録化。そうすることで犯罪も抑止できると城咲さんは力を込めます。

さらには、「ホストもホステスも"ランキング”が好き、目立つことが好き。なので、高額納税者ランキングを出すなどすればいい。そうなるとホストもホストで自分の宣伝になるし、みんな納税もきちんとすると思う。そして、そこで上がった税収は社会のために還元すればいい」とも。

そして、売掛自体は「国がIDで管理することで、ホストは汚いことができなくなる。売掛の問題も減ると思うし、国が介入すると同時に売掛を担当する機関を作ればいい。ホストに安易に売掛をさせないようにする」と城咲さん。「とにかく遊ぶ側も働く側もみんな平等に責任を持つこと」と熱弁します。

ちなみに、城咲さんが調べたところでは、売掛を禁止してもいいというホスト、店舗はそれなりにあるそうですが、もしも売掛を禁止するにあたっては「やるなら全ての店舗で禁止してほしい」という声が多いとか。なぜなら、売掛ができる店舗のほうがホストとしては働きやすく、数字(売上)があげやすいため、売掛のある店舗にばかりホストが流れていってしまう可能性があるから。

そうした意見を踏まえた上でも由井さんの意見は変わらず「売掛禁止」、全てクレジットカードでの決済にすべきと改めて主張。

深澤さんはこの問題の本質にあるのは"女性の貧困と困難”と指摘し、そこへの対処を望みます。「今は、ホストが(苦しむ)女性の駆け込み寺のようになってしまい、結果としてお金を使い、自分が困ってしまうようなところもあるので、むしろ国や都はそうしたところにメインに対処すべき」と主張。

八代さんの意見は、法的扶助の充実化。「好きでやっている人は別として、本当に助けてもらいた人には法的支援、法的扶助が数多くある。お金がない人は法テラス(日本司法支援センター)を使うとか、支援の充実化は現行法で対応できると思うし、あとはもっと法律を知ってもらうことが大事」と言います。

最後に堀は「ナイトエコノミーの充実」。コロナで中断してしまいましたが、改めてナイトエコノミー(夜間の経済活動)を考え、ルール化、産業化、適正化を切望。さらには労働組合など組織化し、「経済圏化することが大事」と持論を述べていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 6:59~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

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