旬を食べよう〜東海地方の伝統野菜〜【野崎(のざき)2号はくさい】愛知県尾張地方(名古屋市中川区)

日本列島のほぼ真ん中辺りに位置する東海地方は、古くからモノやヒトの往来が盛んで、豊かな自然と過ごしやすい気候に恵まれていることもあり、野菜づくりが盛んな地でした。

そんな東海地方には、数々の伝統野菜が地産地消されており、野菜本来の「旬」や食文化を教えてくれる貴重な存在として親しまれています。

愛知県名古屋市中川区内のスーパー・平和堂豊成店で購入した「野崎2号はくさい」

今月は、「あいちの伝統野菜」に選定されている「野崎(のざき)2号はくさい」(写真)をフカボリします。

名古屋市中川区で作出された国産結球ハクサイの代表的品種

包装ビニールをはずして葉が広がったところ。 外葉はひだを伸ばすとかなり大きくやわらかい。
外葉を5枚ほど取り除いた「野崎2号はくさい」。 頭部がよく包被した円筒型で、長さは35センチほど。ずしりと重い。

鍋物や煮物など、冬に欠かせない野菜として知られるハクサイ。原産国は中国ですが、日本に渡来したのは意外と遅く、幕末〜明治初期とされています。しかし、日本国内で栽培しようとするとなかなか結球せず、国内各地で改良に苦慮する日々が続いたといわれています。

そんな中、明治28(1895)年に、愛知郡荒子村(現・名古屋市中川区)の農家だった野崎徳四郎氏が結球する白菜の栽培に成功しました。同氏によってさらに改良が進められたハクサイは大正5(1916)年に「野崎白菜2号」と命名。翌年には愛知県農事試験場と協議して「愛知白菜」と命名され、広く平暖地で作られるようになったと伝えられています。その後もさらに品種改良は続けられ、現在は「野崎白菜」のブランド名で普及しているそうです。(中川区のウェブサイト「中川区人物事典」より)

野崎白菜の元となった「野崎2号はくさい」は現在、水分量が多いため市場に出回らない「幻の白菜」と呼ばれて、流通量はごく少量となっているそうです。

2023年11月末に各所に確認したところ、戸田川緑地(名古屋市港区)内の産直施設「とだがわ陽だまり館」(11〜12月)と、中川区のスーパー「平和堂豊成店」(11〜1月)では、買い求めることができるようです。※入荷状況は変動しますので、各自でご確認ください。

「野崎2号はくさい」は、地元(愛知県)由来で、古く(大正時代)から栽培され、現在でも種や生産物が入手できるという理由から、2002年に「あいちの伝統野菜」に選定されています。

肉厚でやわらかく、みずみずしい味わいの「野崎2号はくさい」を使ったレシピはこちら

葉の肉質がやわらかく甘みがあるのが特徴とされる「野崎2号はくさい」を調理するとどうなるでしょうか。いくつか調理例をご紹介します。

まずは、シンプルに鍋です。ハクサイ以外の具材は鶏肉、ネギ、ニンジン、シイタケ。調味は昆布だしと酒のみで、ポン酢をつけて食べます。火を止めるタイミングはお好みによりますが、少し早ければ特有のみずみずしいシャキシャキ感が味わえ、 長めに加熱すればとろっとやわらかい食感になります。

次に、購入した「野崎2号はくさい」の売り場に置いてあったリーフレット(名古屋市緑政土木局都市農業課発行)に掲載されていた「ロール白菜の豆乳煮」も試してみました。

外葉と、赤味噌を使った「ロール白菜の豆乳煮」。鶏肉のひき肉に細かく切ったエノキと塩コショウを混ぜたタネを、さっと茹でたハクサイの外葉で巻いて、鍋に昆布とロール白菜、シイタケを入れ、味りんと豆乳で溶いた味噌を加えて煮込みました。(外葉は大きいので縦半分に切って、1枚で2個ずつ作りました)

外葉の歯触りがやわらかく、中身は鶏肉のミンチであっさりとしているのに、赤味噌と豆乳の優しいコクが相まってとても美味しかったです。「ロール白菜の豆乳煮」は初めて作ったのですが、とても食べやすかったので、少し違うバージョンも作ってみました。

少し中の方の葉と、合わせ味噌を使った「ロール白菜の豆乳煮」。少し葉にかみ応えが出て(ちょっと若い人向けかもしれません)、これはこれで美味しかったです。もっと色々なアレンジができそうで、想像がふくらみます。

煮込み系の料理を作っている間に、簡単にできる一品もご紹介します。みずみずしく白い根元の部分を多めに使います。

「(自己流)白菜の浅漬け」。

葉を細切りにしてビニール袋に入れ、塩と砂糖、塩昆布(量はお好みで)をふりかけて、シャカシャカと振り混ぜた後、空気を抜いて口を結びます。30分後ぐらいから美味しく食べられますが、半日以上おくとさらによく浸かり、ご飯のお供にオススメです。材料を混ぜるときにお好みでトウガラシを加えても、アクセントが効いて美味しいです。

「(自己流)白菜サラダ」。

浅漬けと同じく細切りにした葉に若干量の塩とコショウをふりかけて、少ししんなりしたら軽く水気を切ります。細切りにしたベーコン(またはハム)とマヨネーズ、お好みで粉チーズを加えてざっくり混ぜて出来上がり。最後に黒コショウをかけると、味が引き締まります。

細切りベーコンを炒めてから入れたり、マスタードを加えてもいいですね。みずみずしさを失わない程度にしんなりした細切り白菜は軽い歯応えが心地よく、箸休めにぴったりです。

普段当たり前に見かけるハクサイの背景に、地元(名古屋市中川区)の先人の献身的な取り組みがあったことを知り、その歴史の証である「野崎2号はくさい」を味わったことによって、人の紡ぐ歴史や伝統の一端に触れたような気がしました。

こうした体験の積み重ねが、人生を豊かにしてくれるような気がします。

地元(名古屋市中川区)における「野崎白菜」関連の取り組み

2010年に愛知県で行われたCOP10(生物多様性条約機構10回締約国会議)を機に、名古屋市中川区でも地産地消の機運が盛り上がり、産学官で構成する「名古屋☆中川区ブランド野菜製品開発研究会」が発足。

野崎白菜をイメージしたキャラクター「はくちゃん」をアイコンとした冬の食べ歩きスタンプラリー「はくちゃん祭り」は2023年で13回目を迎えています。

※野崎白菜を使用したオリジナル商品が食べられる(買える)店が参画。
※第13回の開催期間は2023年11月24日〜2024年1月31日。

詳細は名古屋☆中川区ブランド野菜製品開発研究会(はくちゃんClub)特設サイトにて公表しています。

※掲載情報は公開日時点のものとなります

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