シカの食害からオオキツネノカミソリを守れ! 別府市の猪の瀬戸湿原に保護エリア【大分県】

ネットを張って柵を整備する保全の会メンバー=別府市の猪の瀬戸湿原
ネットを張って柵を整備する保全の会メンバー
密集していた一帯に保護エリアを設置

 【別府】猪の瀬戸湿原(別府市東山)に群生するオオキツネノカミソリ(ヒガンバナ科)をシカの食害から守るため、「NPO法人猪の瀬戸湿原保全の会」は保護エリアを設定した。群生地の約3~4割に当たり、すでに柵の整備を終えた。今年はほぼ全滅した鮮やかな花が、来夏には開花することを期待している。

 同湿原は阿蘇くじゅう国立公園の第1種特別地域で広さは約38ヘクタール。猪の瀬戸バス停の南約400メートルに位置する水口山麓の林や斜面など約5千平方メートルにオオキツネノカミソリが群生している。例年、夏季になるとオレンジ色の花が広がる。

 今年は春先に出た葉が食べられ、ほぼ全滅状態だった。保存の会は、かみ跡からシカの食害とみている。シカの個体数が多く、毒性のあるオオキツネノカミソリでも食べざるを得ない状態になっていると推測している。

 保全の会のメンバー延べ30人が11、26の2日間、オオキツネノカミソリが密集している観察路の両側に防護柵を設置した。周囲にくいを打ってネットを張り、延長計700メートル以上の柵で囲った。

 小田毅副理事長(80)は「被害が3年も続けば湿原からオオキツネノカミソリが姿を消すことになるのではと危惧している。来夏、開花する様子を早く見たい」と期待する。

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