「命に関わる」 2024年問題で医療機器流通に懸念 青森県内、在庫確保や連携模索

北斗医理科の倉庫で医療資器材の在庫状況を説明する秋元会長。「医療機関の診療に影響を与えないように、在庫を多く持ちたい」=11月、弘前市

 「2024年問題」は医療機器の流通にも影響が及ぶのではないか-。青森県内の医療機器販売業者や一部の医療関係者が危機感を抱く。運転手の残業規制に伴う輸送力低下によって、必要な時に必要な分、人工呼吸器や電気メス、医療用マスクなどの資器材が届かなくなる事態を懸念。これまでよりも多くの在庫を持ったり、業者同士の連携を強化したりする動きがある。「医療資器材の有り無しは患者の命に関わる。不足させるわけにはいかない」と関係者は話す。

 「医療機材をメーカーに発注すると次の日に確実に運ばれてくる。しかし来春以降、それがどうなるか見えない」

 県内の医療機関に機材を販売している「北斗医理科」(弘前市)の秋元弘一会長は語る。トラックの本数や納品回数が減少したり、発注から納品までの時間が長くなったりすることで、医療機関に機器が届かなくなる事態を心配する。

 特別にチャーターしたトラックや航空機で運んだとしても輸送コストがかかり、その分上乗せして医療機関に販売するのは難しい。物価やエネルギー単価の高騰で、病院経営は苦しくなっている実態がある。

 同社では、医療機関の診療に影響が出ないように多めに在庫を確保する方向で検討中。ほかの業者の代表も「手術などで絶対欠くことができない物と、そうでない物をリストアップしている」と話す。

 ただ、確保した在庫が早い時期に使用されるとは限らない。マスクやガウンなど滅菌処理加工した資材は、一定期間が過ぎれば、食品の消費期限切れと同じように廃棄する必要がある。「それなりのリスクを取ることになる」と複数の関係者は語る。

 一部の業者は、在庫確保のほか、業者同士の連携を模索する。県内の業者で組織する「県医療機器販売業協会」の会長でもある秋元会長は「各業者は普段競争し合って仕事をしているが、緊急時には協力し、物資を融通し合いたい。東日本大震災発生直後、そのような動きがあった」とし「機器が病院に届かないという事態を発生させてはいけない。患者の命に関わる」とも語った。

 医療現場で診療に当たる医師も24年問題を気にかける。青森市の外科医は「内視鏡手術などでは道具が大事。機器がそろわないと手術延期ということはあり得る。使用する機器によっては代替がきかない物もある」と普段使い慣れた機器を確保する重要性を語った。

 県立中央病院(青森市)の担当者は「現在、医療物資販売業者からのヒアリングを行うなど、情報収集を行い事態の推移を注視している」。

 八戸市立市民病院の今明秀病院事業管理者も「配送遅延などの問題が生じた場合の対策について、業者などを交え検討したい」とし「地方の基幹病院では、薬品や診療材料の有無で、生死を分ける場合もある。国に対しては医療現場への医療資材の配送について、特段の配慮を要望したい」と話した。

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