“エリートフィールド”でスコッティキャメロンがついに優勢? 男子ツアーパター勢力図

初日9番グリーンでバーディパットを打つ幡地隆寛(撮影/服部謙二郎)

◇国内男子◇ゴルフ日本シリーズJTカップ 初日(30日)◇東京よみうりCC(東京)◇7023yd(パー70)

国内男子ツアーが最終戦を迎え、今年のゴルフ界のまとめをする時期に差し掛かってきた。今シーズンの男女ツアー界でギアのトレンドを振り返ると、グリーン上の話題はキャロウェイとテーラーメイドのパターで持ち切りだったように思える(ドライバーも年明けからいつもこの2社の話題でスタートするが…)。

春先にキャロウェイが三角ネックの「トライビーム」を出したのには「テーラーメイドのトラスへの対抗か!?」と業界全体が驚いたが、その後テーラーも「TPトラス」を出して、女子ツアーなどでは両ブランドがそのシェアを取り合ってバッチバチになった。夏ごろにはテーラーが新しいスパイダーを出して話題をさらい、秋口にはキャロウェイがスケルトン窓の「Ai-ONEパター」を出して再びグリーン上がざわつくことになった。

男女ツアーともにグリーン上に並べられた新機種のパターにプロたちが群がり、さながらパター代理戦争の様相を呈していた(女子ツアーはその戦いが顕著だった)。

男子ツアーでは、そんな戦いを横目にしながらも、慌てることなくじわじわと勢力を拡大(もしくは維持)していたのがスコッティキャメロンだった。スパイダーやAi-ONEパターのように目新しい機能を前面に打ち出しているわけではないが、武骨なルックス、削り出しならではの(硬めの)打感、「TOUR ONLY」のサークルTマークがスタンプされた所有感など、ぶれない伝統がプロのハートを確実につかんでいった。

今週の「日本シリーズ」でフィールド内のパター数を数えてみると、驚くことにスコッティ・キャメロンのユーザーが一番多かったのだ(フィールド30人中キャメロン13、オデッセイ12、ピン4、テーラー1)。

聞けば、一つの試合でキャメロンが他社を上回ったのは初めてとのこと。賞金ランキングの上位選手しか出られない、いわゆる“エリートフィールド”で使用者が多いということは、やはりそれだけ“モノがいい”のだろう。なぜここまでツアーで勢力を拡大できているのか。実際に日本シリーズに出ているキャメロンユーザーたちに、その使用感を聞いてみた。

幡地は「東海クラシック」からファントムX11の”やや”センターシャフトに(撮影/服部謙二郎)

「日本シリーズの出場権はファントムのセンターシャフトのおかげ」と言い切るのはキャメロン歴5年の幡地隆寛。元々は「ミスパットしても転がって適当に入っちゃうパターが得意じゃなくて、ミスがミスと分かるようなパターが好き」とブレードタイプの「ニューポート2 タイムレスSSS」を使ってきたが、幡地にとっては難しかったようで、気づけばネオマレットの「ファントムX」にスイッチしていた。さらに今年の東海クラシック時に「ファントムX 11センターネック」にマイナーチェンジしたことで、パットのスタッツは劇的に向上した。

「センターと言っても完全に真ん中じゃなくて、ちょっとだけヒール寄りにズレているので、少し開閉がしやすいんです」と幡地好みのファントムに仕上がった。「タイムレスを使っていた時に、重いグリーンで(カップまで)届かないという欠点があったんです。新しいパターに替えてから、今年一番重かった『日本オープン』のグリーンでもしっかり(カップに)届いてくれて、いいパットが決まっていました。高速グリーンの『マイナビABC』でもいい感じでパットが打てていたので、これならどのグリーンでも使えるなと」

今はネオマレット型がエースになったが、いつかはタイムレスに戻りたいようで「タイガーみたいにブレード型の1本でどんなグリーンでも対応できるっていうのが、なんて言うんすかね、本当のパターの名手だと思うんですよね」。来年はパットの技術をもっと磨いていく腹積もりだ。

12年モノのエースパター(撮影/服部謙二郎)

幡地よりさらに“キャメロン歴”が長いのが阿久津未来也だ。実にその歴12年、出合いは高校2年生の時だった。「今でも覚えていますが、高2の夏の試合でタイトリストの方にキャメロンのパターを作ってもらうことになって。当時は形とか素材とかネック形状とか何にも分かってなくて、どんなヘッドが来るのかも聞かずにふたつ返事で『ハイ!お願いします』って言っていました(笑)」

阿久津が高校2年生から使うパター。銅のインサートが入る(撮影/服部謙二郎)

その時作ってもらったのが今もエースとして使う「T10ニューポート2」だ。「パッと見てウワっ!かっこいい」となり、そこからまさか12年の長期政権になるとは、阿久津青年も想像しなかっただろう。フェースにトレリウムという銅板が入ったモデルで「何もないツルツルの状態よりは多少打感が柔らかい」といい、その程良い柔らかさが阿久津の距離感を作ってきた。心変わりすることもあって「これまでも一日だけL字を使ったこともありますが、ヘッドの大きさが変わると距離感が分からなくなって…」と結局いつもエースに戻していたという。今週も、手に握られていたのは12年モノの銅インサートのキャメロンだった。

はてさて、来シーズンのグリーン上の勢力図はどのようになるのか。今シーズンも残りあと3日になったが、ピンを切る位置を探すのが難しいほど傾斜のきつい難グリーンを攻略するプロの技は見もの。ぜひ現地(東京よみうりCC)に足を運んで、男子プロのグリーン上の妙を生で観戦してもらいたい。(東京都稲城市/服部謙二郎)

フェースにはMIKIYAの文字が刻まれる(撮影/服部謙二郎)

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