竹中さん、新聞販売業に幕 父の代から85年以上、和歌山・田辺市中辺路町

届いた新聞にチラシを折り込む作業をする竹中清さん(左)と婦志子さん=11月30日、和歌山県田辺市中辺路町栗栖川で

 和歌山県田辺市中辺路町で長年、紀伊民報を配ってきた竹中清さん(82)、婦志子さん(79)夫妻=中辺路町栗栖川=が11月30日、父の代から85年以上続けてきた新聞販売業に幕を下ろした。今後は紀伊民報社が竹中さんの事業を引き継ぎ、中辺路エリアでの配達を直接担う。

 竹中さんは「竹中書店」として、書籍販売と新聞販売業を営んできた。新聞販売は、少なくとも1938(昭和13)年には紀伊民報の前身「紀伊新報」を扱っていたという記録が残っている。

 以前は全国紙も扱っていたが、近年は紀伊民報のみを販売。竹中さん夫妻以外に配達員7人で約580部を日々読者に届けてきたが、高齢による体力の衰えなどから新聞販売をやめることにしたという。

 この日は午後2時過ぎ、刷り上がった新聞が竹中さんの元に届いた。皆で協力してチラシを折り込み、必要な部数を配達員に振り分けた後、夫妻も配達に出発。この日で新聞販売業を終えることを知った知人から「長い間お疲れ様でした」などのメッセージが添えられた花も届けられた。

 竹中書店では書籍販売は継続。今後は紀伊民報社が同店を間借りする形で、直接、新聞の配達網を維持する。しばらくは引き継ぎのため、竹中さん夫妻も業務を手伝うという。

 山間部で新聞の戸別配達事業を長年守り続けてきた竹中さんは「土砂崩れに遭遇したり、雪道で滑ったりと大変なことも多かったが、大きな病気をせずに今まで続けることができて良かった」、婦志子さんは「地域の皆さんに支えられて今日を迎えることができた。読者の皆さんが第一なので、うまく引き継げるよう見届けたい」と話した。

 紀伊民報の小山雄希智社長(47)は「竹中さんの長年のご尽力に感謝します。山間地域の読者にとって、新聞は重要な生活の情報。新聞社は情報を届けるのが使命であり、戸別配達を守る努力を今後も続けていきたい」としている。

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