混戦模様続くB3リーグの11月を振り返る

師走に入り、B3リーグ開幕から約2ヵ月が過ぎた。ちょうど1ヵ月前、第4節終了時点では、鹿児島レブナイズを筆頭に上位12チームが2ゲーム差以内にひしめく超大混戦状態だったが、現時点でもその傾向は変わっていない。11月中の動きと今後の展望を5つのポイントからまとめてみる。

1. 香川ファイブアローズが負けなしの8連勝で躍進

11月をB3で唯一負けなしの8連勝で乗り切った香川(12勝4敗、勝率.750)は、現時点で最もホットなチームだ。新任の薮内幸樹HCの下、元日本代表シューターの松井啓十郎やムッサ・ダマ、イバン・ラベネル、アンドリュー・ランダルら能力の高い新戦力を獲得し、チーム状況は昨シーズンとまったく異なっている。

薮内HCは4勝4敗だった10月を「何かが少しうまくいかないと、すごくとんでもないことになってしまっているような、自分たちにプレッシャーをかけすぎてうまくいかなかったところがあった」と振り返っている。しかし、注力するディフェンス面が形になってきた。ここまで香川は平均72.8失点がリーグ2位の低さだが、特に11月の8試合では69.6に抑えている。

薮内HCは「オフェンスは時間がかかります」と話しているが、そのなかでラベネルの平均19.3得点を筆頭に外国籍でけん引。松井も3P成功率35.5%で平均10.7得点とまずまずの数字を残している。並行して今後もディフェンス力を安定させられれば、香川の快進撃はまだまだ続く可能性がありそうだ。

東京ユナイテッドBC戦GAME2(11月17日)でフェイドアウェイ・ジャンパーを放つイバン・ラベネル(写真/©月刊バスケットボールWEB)

2. 徐々に絞られてきた上位争い

上記で触れた香川はそれでも現状首位ではなく4位。首位は福井ブローウィンズ(13勝3敗、勝率.812)で2位の鹿児島レブナイズと3位の徳島ガンバロウズが香川と同率(12勝4敗、勝率.750)だ。福井は得点ランキング2位のトレイ・ボイド(平均24.2得点)の爆発力を生かし、チームとしてもリーグトップの平均89.4得点を記録している。ここまでのホームゲーム8試合はすべて勝利。新規参入クラブながらまさしくリーグに旋風を巻き起こす躍進は、ホームのブースターにとって誇らしいに違いない。

第4節まで首位に立っていた鹿児島は、11月20日に下位の湘南Uに喫した1敗が痛く、2位に順位を落としている。12月はアウェイが6試合あるが、対戦相手はいずれも現時点で負け越している下位チーム。ここは全試合を勝ち取る意気込みが見たいところだ。

徳島は11月を7勝1敗として勝率も順位も上昇させてきている。また5位の横浜エクセレンス(11勝5敗、勝率.688)も11月が6勝2敗で、こちらもペップの通称で親しまれるジョゼップ・クラロス・カナルスHCのバスケットボールが徐々に浸透し始めている印象だ。

3. 対照的な東京ユナイテッドBCと立川ダイス

現時点で2桁勝利に到達している7チームのうち、6位の東京U、7位の立川ダイス(ともに10勝6敗、勝率.625)には対照的な特徴がある。東京Uは、平均失点71.8が前述の香川を上回るリーグ最少。逆に立川は得点ランキング1位のアンドリュー・フィッツジェラルド(24.31得点)、3P成功率1位の秋山皓太(49.06%)らを軸にチーム得点がリーグ3位(86.2得点)だ。

東京Uは第6節でトライフープ岡山に連敗を喫した後、第7節でも、ビッグマンのチュクゥディエベレ・マドゥアバムをコンディション不良で欠いていたことも影響して香川に連敗。これが響いて現在6位という順位になっている。この4連敗中は平均失点が79.8。リーグ最強ディフェンスがほころんだという見方もできる結果だ。第8節の少年U戦では2試合平均失点を63.0にとどめ連勝したが、これを12月に続けることができるかはファンにとって一つの見どころだろう。

立川も、好調なオフェンスを維持しながら、上位7チームの中では突出して多い失点をいかに抑えていくかが課題に違いない。首位の福井とのアウェイゲームに始まり東京八王子ビートレインズ(9勝7敗、勝率.562、9位)、岐阜スゥープス(6勝10敗、勝率.375)、そして徳島と続く12月の日程は踏ん張りどころ。真価を問われる師走になりそうだ。

勝率5割以上を記録している中堅グループの争いもし烈。さいたまブロンコス(9勝7敗、勝率.562、8位)、アースフレンズ東京Z(8勝8敗、勝率.500、10位)を含めプレーオフラインの攻防は今後も大激戦になりそうだ。

4. 湘南ユナイテッドBC、板橋真平が爆発中

11月中に最も順位を落としたチームの一つが、第4節時点の7位から13位まで下降した湘南U(4勝12敗、勝率.250)だった。ただし第4節で岡山に連勝したところからは4勝6敗。序盤の6連敗中も「優勝候補とほぼ対等に戦えているのは収穫」と前向きにチーム状況をとらえていた堀田剛司HCの意図が、コートで少しずつ体現され始めている気配はある。12月は豊田合成スコーピオンズ戦に始まり、金沢武士団戦で終わる日程。徳島、横浜EXとの対戦も含め、ここで勝ち越せるかどうか。前半戦の正念場を迎える。

個々には、ウクライナ人パワーフォワードのオレクサンドル・アンティボが16.8得点、7.8リバウンドでインサイドから存在感を見せ、バックコートで身長168cmの板橋真平が平均14.1得点、3.6アシスト、1.6スティールと気を吐いているのが目を引く。特に11月に入ってからの板橋は大きな脅威で、8試合すべてで2桁得点と絶好調だ(実際には10月28日の岡山戦から現在まで9試合連続)。首位の福井に91-101と食い下がった11月11日の一戦では、3Pショット9本中5本を沈めて25得点と爆発。20日に鹿児島を88-77で破った試合では、果敢なオフェンスでフリースローを15本もらい、すべて沈めて22得点を稼いだ。

板橋真平の爆発ぶりは、湘南ユナイテッドBCにとっては頼もしい限りだろう(写真は10月の横浜エクセレンス戦 ©月刊バスケットボールWEB)

5. 厳しい現実に向き合う金沢武士団、豊田合成スコーピオンズ

最後に、11月に報じられた二つの残念なニュースにも簡単に触れておきたい。まず一つ目は、金沢武士団のシューティングガード、金久保 翔が11月5日に自身のnoteで「金沢武士団の現状と、今後について。」と題する文章を公開し、チーム運営の危機的な状況を明かしたことだ。金久保がその文章で、コーチングスタッフなしで開幕を迎えた金沢の窮状を広く伝えた後、金沢は現時点でも新たなコーチングスタッフ就任を発表しておらず、今シーズンまだ1勝のみで最下位に低迷している。

もう一つは、11月8日に豊田合成が今シーズン限りでのB3退会を発表したことだ。B3唯一の企業形態クラブである豊田合成が退会することで、B3以上の全チームがプロクラブとなる。それ自体は時流かもしれないが、ファンにとっては一般論としてとらえられない、やはり残念な知らせだったことだろう。

金沢もフィナーレとなる豊田合成も含め、B3も全クラブ、全関係者が良いシーズンを送ることができるよう願うばかりだ。

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