北海道の冬の味覚「マダラ」 消費拡大へあの手この手

今回は日本経済新聞社との紙面連動企画「食の王国 売れる極意」。紹介するのは北海道の冬の味覚「マダラ」だ。

【資源豊富なマダラ 手放しで喜べない事情も?】

磯田アナウンサーがやってきたのは、札幌市中央卸売市場。この日は40種類近い海の幸が取り引きされていた。昨今、海の環境が変化し不漁に悩む魚種も多い中、漁獲量が急増しているのが、北海道近海で捕れる「マダラ」だ。

道内での去年のマダラの漁獲量は4万4600トン。6年前と比べると、ほぼ2倍に増えた。道総研・中央水産試験場によると、2012~13年頃にマダラのベビーブームがあり、その魚が育った2016年以降、漁獲量が増加。網を逃れたタラは毎年一回り以上成長し、年々魚体は大きくなっているという。

漁獲域も変化している。かつては道東・根室沖などがマダラ漁の中心だったが、昨今は日本海側やオホーツク海側での漁獲が大きく増え、どの海域でも水揚げ量は1万トンを超える。大漁の一方で漁業関係者の頭を悩ませるのが、値下がりだ。

マダラ1キロ当たりの値段は、漁獲量がおよそ2万トンと少なかった2015年には341円だったが、供給過多となった2020年には167円と、半値以下に下がってしまった。しかし、値下がりは2020年を底に、去年は213円まで回復。価格はまた上向き始め、全体の漁獲金額は100億円に迫る勢いだ。

【マダラの消費拡大を牽引する道内企業】

釧路市の水産加工会社「マルワ北匠」。おみやげや贈答品として人気を集めているのが、魚の真空パック、"レンちん君"だ。マルワ北匠の遠藤マネージャーは「焼かなくてもレンジで3分30秒で出来上がる商品。においも少ないし煙も出ないので、若い一人暮らしの方や年配の方に喜ばれている」と話す。

2021年に発売し、マダラのほか、サンマやホッケなどラインナップは18種類。今では北匠の売り上げの2割近くを占める。

札幌・西区の「コープさっぽろ にしの店」では、鮮魚売り場の中心にマダラコーナーが設けられていた。注目は切り身の種類の多さ。半身や、ブロック、皮引き、厚切りも用意している。料理用途や客のニーズに合わせて提供しているとのこと。

コープ札幌では全店舗で、"食べ方"まで提案する売り場づくりに力を入れている。最近は、離乳食や介護食向けに骨を抜いた切り身の取り扱いも始めた。この店ではピーク時、マダラの切り身だけで一日に20万円を売り上げるという。

【スケソウダラのかまぼこで118年 小樽の老舗】

小樽のかまぼこ専門店「かま栄」。ひとつひとつ職人が手作業で作る、こだわりのかまぼこが長年愛されている。約50種類のかまぼこの中でも長年人気を集めているのが、"パンロール"という商品だ。

かま栄・営業部の福田営業課長「豚挽き肉・タマネギをすり身に入れて、コショウで味付けをして、外側を薄いパンで巻いているのがパンロール」。多いときには一日500本売れるという看板商品。年間の販売数は90万本以上だ。

かま栄では、若い客層向けに、かまぼこをファストフード風にアレンジした商品も展開している。かま栄の福田営業課長は「若い世代にも喜んでもらえるようなかまぼこづくりもしていきたい。そして定番商品も味を変えずに、長年の伝統を保てるような努力をしてやっていきたい」と話す。
(2023年12月2日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

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