[社説]日大アメフト廃部方針 実態の全容解明が先だ

 最善の解決策といえるのか。まずは、実態の全容を解明するべきだ。

 日本大学が、違法薬物事件で逮捕者3人を出したアメリカンフットボール部を廃部する方針を決めた。

 内部の会議で廃部方針を決定し、11月30日に文部科学省に提出した改善計画に明記した。

 一方、1日の理事会では、重要な案件で時間をかけて議論する必要があるとして、継続審議になった。

 もし廃部が決まれば、学生王者を決める甲子園ボウルで21回優勝した名門は、創部83年の歴史に幕を下ろすことになる。

 違法薬物事件は7月、アメフト部の寮で大麻とみられる不審物が見つかったのが発端だ。8月には警視庁が3年生の部員を大麻所持容疑などで逮捕。10月には大麻を密売人から購入した容疑で2人目、11月には同様の容疑で3人目が逮捕された。

 一連の事件では、薬物が部内全体に広がっていたのか、一部の部員だけのものだったのか、全体像がまだ分かっていない。

 全容を明らかにしないまま一足飛びに廃部することは、問題にふたをすることにならないか。

 1日の違法薬物事件の初公判で、起訴された部員は「10人程度が大麻を使っていたと思う」と述べ、寮の空き部屋などで月1回から週数回の頻度で使用していたことを明らかにした。

 部内で何があったのか。徹底的に調査する必要がある。

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 日大の指導者、上層部の対応にも批判が集まっている。

 昨年10月、アメフト部員の薬物使用に関する情報が保護者から寄せられ、大麻使用を自己申告した部員がいたにもかかわらず、部の指導者は詳しい調査をせず、厳重注意にとどめた。

 同12月、沢田康広副学長が警視庁からの情報提供で大麻疑惑を知り、寮の荷物検査を実施したところ、植物片などが見つかった。ところが警視庁に届けず、12日間保管した。

 翌日報告を受けた酒井健夫学長や、1週間後に知らされた林真理子理事長も問題にせず、学内規定に基づく理事会への報告もしなかった。

 隠蔽(いんぺい)体質ともいえるお粗末な対応で、大学への信用を失墜させた責任は重い。

 理事会は11月末、酒井学長と沢田副学長の辞任を決定。林理事長を減給処分にした。

 大学側は「不退転の覚悟で大学運営の健全化をはかる」とする。ガバナンス(組織統治)の徹底的な見直しが求められる。

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 廃部方針について、スポーツ関係者からは、薬物に関わっていない学生が活動の場を奪われたり、反省を含めた学びの機会が奪われることを懸念する声が上がっている。

 日大はこれから、文科省の指導チームの支援を受け、学内改革に取り組むことになる。

 抜本的な体質改善と学生を第一に考えた改革を進めるべきだ。

 特に、若者に広がる薬物問題に真剣に取り組む大学に生まれ変わってほしい。

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