自家焙煎11種や「サイフォニスト」… 個性光るコーヒー専門店、姫路に続々 店主ら「コーヒーで地域盛り上げたい」

自家焙煎のコーヒーを入れるリグリーンコーヒーの大樫信二さん=姫路市勝原区宮田

 品質の高い豆を使ったスペシャルティコーヒーを提供する専門店が、兵庫県姫路市内に増えている。市内3店舗を巡ってみると、ひとくちにコーヒーと言っても、浅いりが自慢のお店や、サイホンで抽出する店などそれぞれの個性が光る。そこには店主たちの「地元・姫路をコーヒーで盛り上げたい」という共通の情熱があった。(橘高 声)

◆HI,COFFEE.(ハイコーヒー)=姫路市町坪 苦手な人も飲める浅いり

 閑静な住宅街にひっそりたたずむハイコーヒーは、今村卓磨さん(34)、香織さん(37)夫婦が営む。米国発祥のカフェ・ブルーボトルコーヒーなどで腕を磨き、コーヒーで地域を盛り上げたいと昨年4月に地元・姫路で店を開いた。

 平日は会社員の顔を持つため、お店を開けるのは毎週土曜日のみ。ほかの日は店舗を持たないコーヒー店に間貸しもしている。自身も店舗を持たずイベント出店のみでお店を始めたという今村さんは「同じコーヒー屋さんが挑戦できる場所を作りたい」と話す。

 同店の自慢は、浅いりのスペシャリティコーヒー。そのときおすすめの豆を焙煎(ばいせん)、ブレンドしている。今村さんは「浅いりは、コーヒー特有の苦みがないから豆の個性がよりわかる。コーヒー好きも苦手な人も気に入るはず」と胸を張る。

 午前11時~午後5時。

◆REGREEN COFFEE(リグリーンコーヒー)=姫路市勝原区宮田 自家焙煎11種類「飲み比べて」

 店主の大樫信二さん(34)はたつの市出身。小学生の頃からコーヒーが好きだった。姫路市内で会社員として働いたが、一念発起してコーヒーの世界に飛び込んだ。新型コロナウイルス禍の2021年3月に開店。初めの1年は家賃だけを払う状況が続いたが「コーヒーのおいしさを伝えたい。絶対やろう」と踏ん張った。

 同店の強みは、いつでも11種類の自家焙煎(ばいせん)の豆をそろえていること。そのうち2種類は月替わり。全種類を飲み比べることもできる。

 大樫さんは、モモの味がするコーヒーに出合って衝撃を受けたといい、「焙煎の仕方や豆の種類によって酸味が出たり、フルーティーになったり全く味が変わるのがコーヒーの面白いところ」とほほえむ。「違いが分かって自分の好みを知ることができたら、他のお店でもコーヒーをもっと楽しめるでしょ」

 月曜休み。平日は午前10時~午後6時半、土日祝は午前9時~午後6時半。

◆KUUHAKUCOFFEE(クウハクコーヒー)=姫路市本町 サイホンで香りにこだわり

 2021年11月、姫路城からすぐの場所にオープンした。店主の寳(たから)和輝さん(31)の肩書は「サイフォニスト」。コーヒー粉を湯に漬けながら抽出するサイホンコーヒーを提供する。

 姫路市生まれ育ち。大学生のとき、イタリアで飲んだラテが忘れられずコーヒーの世界へ飛び込んだ。入社したUCCでサイホンコーヒーと出合った。

 サイホンはドリップに比べ雑味が出にくく、コーヒー本来の香りが楽しめるという。扱う豆は「おいしいものから面白いものまで」がモットー。自家焙煎のものに加え、県内の焙煎所から仕入れたイチゴの風味がする変わり種もある。

 同店のロゴはカギカッコがモチーフ。その「空白」の中にコーヒーを飲んで感じたことを自由に入れてほしいという思いを込めた。寳さんは「コーヒーを楽しめて、人と人がつながれる場所を姫路でつくりたい」とほほえむ。

 火曜休み。午前11時~午後7時。

■播磨に広がる活性化の輪

 コーヒーの輪は姫路だけにとどまらない。ハイコーヒー店主の今村卓磨さんは今年6月、上田珈琲焙煎(ばいせん)所(高砂市)とネイビーコーヒーロースター(明石市)とともに「ハリマコーヒーベルト」というチームを結成し、播磨地域を盛り上げようと奮闘している。

 ハリマコーヒーベルトは、3店舗のコーヒー豆が月替わりに届く「定期便」サービスを提供している。11月下旬には、播磨エリアのコーヒー店などを集めた初めてのイベント「ハリマコーヒーベルトフェスティバル」を開いた。各店の個性を感じてもらおうと、少量ずつ飲み比べられるチケットを用意した。

 この日、会場の姫路駅北にぎわい交流広場はコーヒーの香ばしい香りに包まれた。姫路市内や、加古川、明石の店が自慢の豆で入れたコーヒーを出すブースがずらり。飲み比べチケットは開始後2時間で約200枚が売れる盛況ぶりだった。神戸市須磨区から訪れた女性(33)は「コーヒーには詳しくないけれど、各店を飲み比べると甘みや酸味など違いが分かって楽しい」と味わった。

 上田珈琲焙煎所の店主上田健太さん(37)とネイビーコーヒーロースター店主の大濃(おおの)功一さん(40)は「コーヒーの魅力を幅広い人に知ってもらえたのでは」と声をそろえる。今村さんは「コーヒーを目当てに、遠方の人たちにも姫路など播磨地域のまちへ足を運んでもらえるようになればうれしい。今回の手応えをもとに、さらに多くのお店と力を合わせたい」と意気込む。

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