西宮地方卸売市場、新装オープン 青果取り扱いは兵庫県内最大 JR西宮駅前、休場日はイベント広場に

完成した西宮地方卸売市場の新施設でにぎわう青果店=西宮市池田町

 JR西宮駅前にあり、老朽化のため建て替え工事を進めていた西宮地方卸売市場(兵庫県西宮市池田町)の新施設が完成し、1日にオープンした。半世紀で5回の移転計画が浮上したが、いずれも頓挫。現地で再整備する方針が10年前にまとまり、着工から約1年2カ月で完成した。年間売上高は64億円で、青果の取り扱いは県内の地方卸売市場で最大となる。(山岸洋介)

 新施設は広さ約6千平方メートル。卸売業者10社と関連業者2社が入居する。卸売業者の入る2棟をつなぐ大屋根が特徴で、市場が休みの日にはイベント広場として活用される。

 場内にはもともと民設と公設の2市場があり、西宮市卸売市場として運営されていた。卸と仲卸が一体となった業者が入居。競りではなく、買い付け客と一対一で取引する「相対売り」を行っていた。

 市は1964年以降、5回にわたって臨海部への移転を計画したが、業者の賛否が割れて合意に至らず、いずれも断念していた。阪神・淡路大震災の後も大規模な建て替えは行われず、老朽化が進行。市が2013年に現地での建て替え方針を示し、再整備の構想が前に進んだ。

 民設、公設の2市場を19年7月に統合し、民営化。今年10月、市場名を「西宮地方卸売市場」に変更した。整備費は9億9千万円で、うち1億8千万円は市場事業者の出資する会社「西宮市場」が、残りは市が負担する。市は業者の入る2棟を所有し、賃料(年2192万円)を受け取る。

 市は「食の流通拠点として機能を強化した。駅前の好立地を生かし、活気と魅力ある場にしたい」。西宮市場の中島昌彦事務局長は「地域に開かれた市場を目指す。一般の方も気軽に訪れてほしい」と話した。

 再開発事業では、市場の集約によって生まれた土地に、店舗の入る複合施設や高層マンションを建設。27年春の完成を予定する。

■「規格外食材、子ども食堂に提供します」 西宮地方卸売市場、LINE活用、登録呼びかけ  

 食材高騰に悩む子ども食堂を支援しようと、西宮地方卸売市場(西宮市池田町)は、廃棄されることの多い規格外の野菜や果物を、市内の子ども食堂に無償提供する。通信アプリLINE(ライン)を活用し、希望する運営団体に持ち帰ってもらう。

 市場には日々、規格外で販売はできないものの、十分に食べられる食材が出る。一方、地域の子どもに無料や安い価格で食事を提供している子ども食堂は、財政的に厳しい運営を迫られているところが少なくない。そこで、市と市社会福祉協議会の協力を得て、LINEのグループ機能で子ども食堂とマッチング(橋渡し)する仕組みを構築した。

 まず市場側が販売に向かない食材を写真撮影し、グループLINEに投稿。子ども食堂は投稿を見て「ニンジン10本、ジャガイモ15個ほしいです。午後2時ごろ取りに行きます」などと希望の食材や訪問時間を返信し、受け取りに行く。

 10月19日から試行し、すでに8カ所の子ども食堂が登録している。市場担当者は「食品ロスを減らし、地域の役に立てる仕組み。おいしく食べてもらいたい」と登録を呼びかけている。(山岸洋介)

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