津波から逃げ切れるか GPSで避難経路や時間計測し検証、和歌山・すさみ町

高台へ逃げる津波避難訓練の参加者(和歌山県すさみ町江住で)

 南海トラフ巨大地震による津波に備え、和歌山県すさみ町やIT企業などでつくる共同事業体「すさみスマートシティ推進コンソーシアム」が、衛星利用測位システム(GPS)を使ったデジタル津波避難訓練をしている。住民の避難経路や避難にかかる時間を計測して、実際に津波から逃げ切れていたかを検証する。

 同コンソーシアムを組織するのは、町や県、IT企業のソフトバンクやウフル(いずれも東京都)。

 11月18日には江住地区(139世帯229人)で訓練を実施した。巨大地震で沿岸部に6分で30センチ、10分で5~10メートルの津波が到達すると想定されている地区だ。

 訓練には住民ら約20人が参加。江住公民館で自分のスマートフォンにGPSで避難経路などが記録されるアプリをダウンロードした後、自宅、公民館、江住支所など、それぞれの場所から、自分が最適と思う高台へ自由に避難した。徒歩だけでなく、バイクや車で避難する人もいた。

 自宅から避難した浜口文子さん(73)は「何度も避難訓練に参加している。今は何とか逃げられるが、年齢を重ねて避難のスピードが遅くなっていくことが心配」。江住支所から避難した町職員の谷口有紗さん(31)は「走って逃げたが途中でしんどくなり歩いてしまった。実際に地震が起きたらパニックになると思う」と振り返った。

 町防災対策室の岩田省吾室長(57)は「津波が到達するのが早い地区なので、避難を始めるまでの時間をいかに短くするかが、大事になってくる」と指摘。この日の訓練を担当したウフルの廣羽裕紀さん(38)は「今回は土地勘のある地元住民が訓練の対象だったが、観光客など土地勘のない人や子ども、外国人を対象にした訓練も実施したい」と話した。

■12月に防災イベント

 12月9日には、周参見小学校で防災意識向上イベント「SUSAMISAI(すさみさい)」を開催する。18日の訓練で得たデータ、県提供の津波浸水データ、国土交通省の3Dオープン地図「プラトー」を使って、実際に住民が津波から逃げ切れたかどうかを検証する。

 同コンソーシアムは9月、町内で音声を放送できる「スピーカードローン」の実証実験を実施した。音声がどの程度の範囲まで聞こえるかなど避難誘導の可能性を探るなどの実験を試みている。

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