古里発信 未来へ、世界へ/1個人1団体に東奥賞

釆田社長(左)から東奥賞を贈られる、柾谷伸夫さん(右)と弘前フィルムコミッション実行委員会の白戸大吾委員長=2日、青森市のホテル青森
関係者ら(後列)と受賞を喜ぶ、柾谷伸夫さん(右)と弘前FC実行委員会の白戸大吾委員長=2日、青森市のホテル青森

 東奥日報社は2日、文化、芸術、産業など各分野で活躍し、青森県の発展に貢献した個人や団体に贈る「第76回東奥賞」の贈呈式を青森市のホテル青森で開いた。本年度は、長年にわたり南部弁の保存継承、地域文化の発展に貢献してきた八戸市の柾谷伸夫さん(75)と、弘前市を舞台とした映画やテレビ番組の誘致、撮影支援に尽力してきた弘前フィルムコミッション実行委員会(同市、白戸大吾委員長)の1個人1団体に贈った。

 柾谷さんは、県南地方に伝わる昔話「南部昔コ語り」の指導、南部弁講座の開催、南部昔コ集や会話集の刊行、南部弁サミットの企画などに取り組んできた。子どもたちや若者への方言継承にも力を注ぎ、八戸学院大学では客員教授として八戸の歴史や文化、伝統芸能の講義を受け持つ。八戸市公民館長、演劇集団ごめ企画代表、八戸童話会会長、鮫神楽保存会会長なども務め、多方面から地域の魅力を後世に伝える活動を続けている。

 弘前フィルムコミッション実行委員会は、弘前市で行われる映画やテレビ番組の撮影を受け入れ、撮影場所の選定や使用交渉、スタッフの宿泊手配、機材の調達などを通じて制作に協力してきた。県内のフィルムコミッション(FC)の先駆けとして2003年の設立以来、携わった作品は20年間で260件を超える。作品を通じた弘前市、青森県の知名度やイメージ向上に加え、撮影グループの滞在などによる経済効果獲得にも貢献した。

 贈呈式では東奥日報社の釆田正之社長が受賞者に賞状とメダルを贈り、「それぞれの分野でたゆまぬ努力を積み重ね、著しい成果を上げてきた皆さまの、さらなる活躍を願う」とあいさつした。

 贈呈式に出席した宮下宗一郎知事は「皆さまの熱意と功績は、青森県民の誇りであり、その活躍は青森県の教育、文化、観光の振興に大きな力を与えている」と受賞者をたたえた。演劇集団ごめ企画団員の柏木七穂さんがお祝いの言葉を述べ、桜田宏弘前市長がビデオメッセージを寄せた。

 東奥賞は1948(昭和23)年、東奥日報創刊60周年と紙齢2万号を記念して東奥日報社が制定した県民顕彰。今回を含め171個人・93団体に東奥賞、9人に特別賞、7人に特別顕彰、2人に特別栄誉賞、1人に特別大賞を贈っている。

受賞者の声

南部弁の面白さ伝える/柾谷伸夫さん

 南部弁継承に向けて毎日忙しく走り回っていることを認めてもらえた。大学時代を弘前市で過ごし、津軽弁に比べて南部弁が話されていないことにカルチャーショックを受けた。危機言語である南部弁を子どもたちが使ってくれるような雰囲気をつくっていきたい。自分の古里の言葉をこれからも大事にして、体の動く限り、南部弁の面白さを伝えていきたい。

映像作品制作は祭り/弘前フィルムコミッション実行委員会・白戸大吾委員長

 約20年の活動が評価されて大変うれしい。映画やテレビドラマなどの大規模な撮影では非常に多くの方々に協力してもらい、その作品が公開・放送されると、撮影に協力してくれた人たちと一緒に盛り上げていくため、映像作品の制作は一つの祭りだと思っている。これからも弘前を舞台にした作品を祭りのように盛り上げていきたい。

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