信号待ちをしていたら無免許運転の車が突っ込んできた 私“玉突き事故”の渦中に「えっ、なぜ?車の修理代は自分で?」【衝撃の交通事故体験記】

今年10月。日曜午後6時すぎの名古屋市内。休日の買い物をホームセンターで終わらせた帰り道。

片側3車線の国道の真ん中の車線を軽乗用車で家族と共に走行中、前の車が止まったのでハンドルを握っていた私は続けて止まった。

後部座席にはシートベルトをした妻と、25歳の娘。世間話をしながら前の車が進むのを待っていた。あたりはとっぷり日が暮れていた。

日曜日のその時間は自然渋滞が起きる国道だった。

乗っていた軽乗用車は2年前に購入

メーター表示の走行距離はこの日で9000キロ余り。

この3車線の国道では右側と左側の車線に安易に入ると、ほどなくして次の交差点に差し掛かるので、その時点では真ん中の車線が渋滞していても我慢して車線変更しないことにしていた。

両側の車線がすいているからどちらかに進むと、先の方で直進するのに更にやっかいな渋滞に巻き込まれるという箇所だった。

自宅まであと10分ほど。もうちょっとの辛抱だった。その時だった。

“玉突き事故”の真ん中になってしまった

『ガツン!』という強い衝撃。後部座席の2人の『キャー』という大きな悲鳴。

ブレーキペダルに置いていた右足をとっさに踏み込むも車は踏みとどまれず、目の前のコンパクトカーの後ろに『ゴツン!』車内のエアバッグは作動しなかった。

いったい何が? 私の車は後ろからぶつけられ、さらに前の車にぶつかるいわゆる“玉突き事故”の真ん中になってしまった。

後部座席からハッチバックのドアまでの距離は60センチもない。2人の背中のすぐ後ろにハイブリッドの普通乗用車が飛び込んできたのだった。

すぐに家族に声をかけた

ハンドルを握っていた私は、すぐに後部座席の家族に声をかけた。

私「大丈夫?」
妻『うん。大丈夫・・・』
娘『大丈夫だけど・・・』

ヘッドレストに後頭部を2回打ちつけたと娘は青ざめていたが、幸い大きな怪我はなく、妻は胸のあたりが少し痛いとは言っていたが、骨折などはなく、病院でその後に検査したところ、私を含め3人ともに大した怪我はなく、無事でよかった。

「無免許?きみ」と聞き返すと、間髪入れずに『はい』

事故直後のこと。呆然とする中で、30前後の男性が運転席の外まで駆け寄ってきて『すいませんでした』と言ってきた。ぶつかってきたドライバーだ。

これまで小さな追突事故の当事者になったことはあるものの、ぶつけられた上、ぶつけてしまうという“玉突き事故”はこの日が人生初めて。

よっぽど私はブレーキを瞬間踏み込んだらしく、話しながら右足全体のけだるさを感じていた。

車の通りが激しい国道。かけつけた男性に窓を開けて「前の車にもぶつかっているので、とにかく警察に電話してください」と伝えるも、ポカン。

「現場がこのままだと混雑するからとにかくすぐに警察に電話して!」と続けて言った。

すると男性は、『警察への電話だけは…。修理のお金は払いますから』 と耳を疑う発言。

「無免許?きみ」と聞き返すと、間髪入れずに『はい』という返答。愕然とした。

そこに警察官がやって来た

男性は、私の前の車を運転していた男性ドライバーにも声をかけに行った。ことの重さは受け止めていたようだ。

すると、歩道から『どうしました?お身体大丈夫ですか?車を歩道沿いに移動できますか?』の声。1人の警察官だった。

たまたま事故現場の数十メートル先でも直前に“玉突き事故”があったとのことで、警察官はその事故処理を終えたところで付近の人から『あそこでも事故みたいですよ』と言われ確認しに来たとのことだった。ほっとした。

先頭車両は40代男性が運転 助手席には車いすが

前の車の運転手は40代男性だった。

1人で移動中で、助手席には折りたたまれた車いすが載っていた。

男性の車はハンドル部分にアクセルとブレーキを備える福祉車両。追突の衝撃でハッチバックのドアは修理が必要に。

後日、男性に聞くと、すぐにレンタカーを借りようにも福祉車両は簡単には見つからないとのことだった。

車いす生活の男性から一時的に移動の足を奪ってしまった気の毒な事態。幸い男性に怪我がなく良かった。

事故を起こした男性は無免許 信号待ちの車に突っ込む

事故を起こした無免許の男性は、前方2台の車の修理代と、関係する搭乗者たちの病院での検査費用なども請求されることになる。

信号待ちの状態の車に突っ込み、かつ、無免許運転。

警察官は『過失割合は100対0』『全面的に無免許の男性に非がある』とその場で知らせてくれた。

そして、『みなさん後日、警察署で聴取に応じてほしいです』とも伝えられた。

程なくして、無免許の男性は自身の車の助手席に乗せられ、近くの警察署に警察官の運転で移動。事情をさらに詳しく調べられることに。

車椅子の男性も現場での手続きが終わると、車は自走できる状態ではあったので、その場から離れた。

私の車はというと、後ろから押されたバンパーが後輪タイヤに接触し自走できない状態になり、修理工場までレッカー移動することに。

雨の中、レッカー車が現場に到着するまでハザードをつけて1時間あまり待ちつづけ、ようやく現場を離れることができた。

「残念ながら 最悪の部類に入る事故です」と告げられた

さらに驚く体験はこの後にも。

ぶつかった無免許の男性の車両は、自賠責保険には加入していたので私達の身体に関する治療費などの支払いについては問題はなかった。

車の修理代は100万円あまりかかるという見積もりが工場からは報告されていた。

私が加入している保険会社の事故担当者によると『残念ですが、最悪の部類に入る事故です』ということだった。なぜかと言うと…

ぶつけられたのは“無保険”の車だった

男性には月々定期的に収入が入ってくる仕事がない上に、任意保険には加入していなかったようで、いわゆる“無保険”の車にぶつかられたのだった。

男性は自腹で100万円あまりの修理代をすぐに支払うのは無理。『相手が生活をしていくのに最低限の収入を奪うような請求はできない』というのが、保険特約でサポートしてくれることになった弁護士からの話だった。

まさか「自分の保険を使って修理する」!?

『相手が保険に入っていないとなれば、あなたの保険を使っていったん修理するというのが残された道です』とも。

「では、保険から払ったとして、私が来年から払い込む任意保険の保険料はどうなるんですか?」

『上がります』

「えっ?100対0で相手が全面的に悪いという事故なのに、自分の保険で修理して、自分の保険の支払いは翌年から増えて、車はまだピカピカなのに”修復歴あり”という烙印が押され、売却時の価値は大きく目減り。何より家族と自分の命も脅かされた。言葉悪いですが、“やられ損”としか言いようがないのですが?」

『せめてもの賠償の気持ちは相手の男性にはあるようですが、どうしてもお金をすぐには作れない人には請求はできません』

「人のものを壊したら弁償するのが当たり前ではないのですか?周りの人からお金を借りてでも壊したものはもとにもどすのでは?子どもでもわかるでしょう?」

『相手が未成年の方なら、保護者が用立てるということはありますが、成人にはそれを求められません。会社の仕事中での事故であったりしたら、会社側に請求するというケースもありますが、今回の場合はそこにも当てはまらず、この車を廃車にしないのであれば、修理に関してはご自身の保険で直すのが現実的なんです。お気の毒ですが』

「だったら世の中には同乗者が命を落とすような事故にあっても、ぶつかつた相手の保険の加入状況次第では、十分な補償を得られないということもありそうですね?」

『はい。交通事故の中にはそういうケースはあります。めずらしいことではありません。いま、若い人たちの中には特に車の任意保険に加入していないケースを目にします。賠償金を請求できないという理不尽な状況も命が失われたケースにおいても…』

(なんたることか…。)

結局、無免許の男性は20万円を支払い、残りの80万円を超えるであろう修理代は私が加入する保険からの支払いに。

保険とは言え、やはり、ぶつけられて払うことに理解が追いつかなかった。

保険会社の事故担当者によると
『「修理代は分割で払います」と仮に相手方が言ってきても、そのうち支払いが滞り、最後には本人の行方が分からなくなるというケースもあります。
私たちにとっても事故の相手方が保険に入っていないとなれば、回収できないことも想定します。

損害が大きい事故は交渉が難航するのは間違いありません。事故車の修理を分割払いで受ける工場はないに等しいですし』

ということで、私の加入する保険会社と無免許男性の話し合いがどう決着する方向なのかは、現段階では聞いていない。

無免許の男性が支払うのは“玉突き”の先頭車両の修理代に関しても‥。

今回の事故は、関係するすべての人が「困ったもんだ」ということしかない。

警察も車の修理については口は出さない。”民事不介入の原則”がある。

『夜の飲食店の女性たちを車で送迎する仕事で食いつないでいました』

私の車にぶつけた男性はコロナ禍で定職につくことが厳しかったということだった。

しかし、無免許運転をしていたのは許されざる事実。

かつてスピード違反をおかし免許を失っていたとのこと。コロナ禍で『夜の飲食店の女性たちを車で送迎する仕事で食いつないでいました』と話した。

生活が大変だったのは理解できるが、もしも無免許での送迎仕事だったとしたら、それはなおさらとんでもないことだった。

私の車の後部を映すドライブレコーダーには、渋滞する中、私の車の後ろ2台が続けて車線変更していった後に、男性の車が止まった状態からスピードを上げながら追突してきた状況が映っていた。

猛スピードでつっこんできたわけではなかったので、衝撃は少しはましだったのかもしれない。

男性は『ぶつかるまで、何も気が付きませんでした』と。漫然と運転していたということだった。

まさかの「事故」振り返ってみると…

いま思うのは、
・任意保険に入っていてまだましだった。
・その保険に弁護士特約のオプションをつけていて良かった。

・後方が映るドライブレコーダーの映像は大事な証拠に。
・無保険の人の車がからむ事故に巻き込まれると不幸になるということ。

普段、目にする交通事故のニュース。
事故に巻き込まれると補償や治療など、その後も様々な手続きが待っているということが今回の出来事を経験して改めてよくわかった。

『はい、それで終わり』ではないのだ。当事者たちにとってはその後も事故と長く向き合うことになる。

ニュースのその先を想像すると、当事者になるとかなりつらいことも待ち受けているはずだ。

年末年始の忙しい時期に無駄な時間をとられる上、面倒くさいことにならないよう車の安全運転は心がけていただければと思う。

しかし、気をつけていてもどうしようもないことが降りかかることも。
あえて自分の身におきたことをお伝えしました。

どうぞ、この体験が何らか参考になればとお伝えする次第。安全運転で行きましょう…。

(CBCテレビ報道部 大園康志)

1988年アナウンサーとして入社。2000年からはドキュメンタリー制作と並行。2008年から報道部勤務。現在は『おっさんデスク』として夕方の『チャント!』の一兵卒。

ディレクター代表作に『山小屋カレー』など。プロデューサー作品『笑ってさよなら』『ヤメ暴』『よりそい』など。国内外の番組&CMコンクール受賞多数。映画監督作品に『劇場版 恥ずかしながら』(2022年3月公開) など。

著書
『球審は永野さん-あの夏【神様がつくった試合】で見た景色』(2023年7月出版)

監修著書『終わりゆくテレビ時代に〜テレビ草創期からのドキュメンタリーディレクターの軌跡 (著.竹中敬一)』(2022年9月 ゆいぽおと発行)

鹿児島市出身。趣味:バレーボール バイク

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