土井利位の愛刀取得へ 茨城・古河市 鞘に雪華文装飾 企画展も計画 

古河市が取得する大小2本の刀。鞘には雪の結晶のデザインがある(古河歴史博物館提供)

茨城県古河市は、江戸時代の古河藩主、土井利位(としつら)(1789~1848年)が愛用した刀を取得する予定だと発表した。鞘(さや)には雪の結晶模様「雪華文」が施され、「雪の殿様」で知られる利位自身がデザインを指示した。刀剣愛好家の子息から2500万円で譲渡を受ける予定。

利位は有能な政治家として実績を重ね、江戸幕府の老中筆頭まで上り詰めた。その一方で学問を究めた藩主としても知られ、日本で初めて雪の結晶を記録した「雪華図説」を刊行した。

取得する刀は長さ71.3センチと50.3センチの大小2本。同藩の刀工、固山宗次(こやまむねつぐ)に指示し、1841年に制作された。鍔(つば)や鞘、柄など刀装具には、利位が観察した雪華文がふんだんに取り入れられている。

刀剣愛好家(故人)が所有していたが、子息から市に譲渡の相談があり、取得を決めた。市は5日開会する市議会定例会に議案を提出し、議決を経て本年度内の取得を目指す。

利位が刀装具や馬具、染織品などのデザインに雪華文を取り入れたことは知られているが、ほとんどが散逸しており、古河歴史博物館の資料として残っているのは書状のみ。今回取得予定の刀は現在では唯一、利位の指示で作られたと確認できる美術工芸品となる。

同博物館の永用俊彦学芸員は「唯一無二の貴重な刀。市民の宝となることは間違いない」と話す。同館では取得後、刀をメインとした企画展を来年度に計画している。

雪華文が施された刀の柄頭(古河歴史博物館提供)

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