[食の履歴書]中村輝晃クラークさん(アメリカンフットボール選手)パリ風パスタ大好き おにぎりで体つくる

中村輝晃クラークさん

アスリートは、競技によって体重をコントロールしなくてならないなど、食事について気を付けないといけないことがたくさんあります。

でもアメリカンフットボールの場合は体重を維持する必要もあるので、あまり制限がありません。食事については人それぞれで考え方が違い、すごく気を付けて節制している人もいれば、好きなものを食べるという考え方の人もいます。

僕は後者の方です。ヘルシーな食材や料理は、味が薄かったりして食べづらい面もあるじゃないですか。僕の場合、食べないとけっこう体重が落ちちゃうんです。ですから好きなものを量的にいっぱい食べることで、体を良い状態にキープできていると思っています。

僕が食べたいと思う料理は、子どもの頃に好きだったものが多いですね。ちっちゃい頃に食べた「あの味」が好き、という感じです。

両親は日本人ですけど、僕はフランスのパリで生まれ、11歳の時まで向こうで過ごしていました。

母親が作ってくれたパスタがすごく好きでした。中でも1番は、ミートソース。ひき肉がたっぷり入ったスパゲティをよく作ってもらいました。あとはラザニア。好きな食事を取ると元気になれますよね。僕にとっては、この二つが元気を出すための食事といえると思います。

日本に来てからアメフトに出合ったんですが、学生時代には試合前日によく母親にミートソースやラザニアを作ってもらいました。勝負飯ですね。結婚してからは妻もそのあたりを考えて、「パスタ、食べる?」と提案してくれます。

スパゲティはイタリア料理ですけど、フランスで食べる機会が多かったですね。給食で頻繁に出ましたし、友達の家に遊びに行った時にも食卓によく出ました。

日本ですと、おかずの隣にご飯があるじゃないですか。それと同じように、パリの給食では肉や魚料理の隣にスパゲティが出ました。それもバターとかであえただけというのが多かったんです。具もソースもないようなスパゲティを、おかずと一緒に食べるんです。

僕は炭水化物が好きなので、朝食でのバゲットもおいしく感じました。ヌテラ(ヘーゼルナッツとココアのスプレッド。チョコレート風味)を塗って食べたり、チーズを挟んで食べたりしていました。

外食の思い出といえば、ムール貝ですね。パリの南西の方に、ワインで有名なボルドーがあります。結構な距離なんですが、家族3人でドライブを兼ねた旅行で訪れることが多くて。ボルドーは比較的海が近いので、そこに行くとムール貝を食べたんです。注文すると山盛りで出てくるのもうれしかったですね。

食材としては他に、エスカルゴが好きです。今もピカールというフランス食材を扱う店で買い、食べています。うちには小学3年と保育園年長の娘がいますが、2人とも、ものすごく喜んで食べています。でも、まだエスカルゴの正体がカタツムリだとは言っていません。

このように子ども時代に好きだった食べ物は今でもおいしく食べているんですが、それはフランス料理だけではありません。僕はご飯も大好きなんです。

特に好きなのは、おにぎり。母がよく握ってくれました。3歳くらいの僕が、おにぎりを食べている写真が残っているんです。本当においしそうに食べていて、すごく印象的な写真です。

おにぎりの中には、何も入ってないのが好きです。ご飯にちょっと塩味が付いているだけ。具がないことで、ご飯の味をより深く感じることができるじゃないですか。具なしおにぎりも、パリ時代から僕の体をつくってくれた大好物なんです。 (聞き手・菊地武顕)

なかむら・てるあき・くらーく 1988年、フランス・パリ生まれ。駒場学園高校でアメリカンフットボールを始め、日本大学時代にU-19日本代表とノートルダム・ジャパン・ボウル日本代表に選出された。卒業後、富士通フロンティアーズに所属。ワイドレシーバーとして、日本選手権(ライス・ボウル)7度の優勝に貢献。2017年の日本社会人選手権ではレシービングヤード記録を更新し、MVPに輝いた。

© 株式会社日本農業新聞