“フードバンク”なのに食品不足 6年で20倍以上に増加「子ども食堂」を物価高騰が直撃 “画期的”取り組みは愛知・蟹江町にあった【夏目みな美取材】

長引いたコロナ禍や度重なる物価高の中、子どもたちや生活に困っている人たちの食料支援の現場では、どんな影響が見られるのでしょうか?

名古屋市北区のNPOセカンドハーベスト名古屋。

企業や個人から寄付される食料品を、必要な人や団体に無償で提供するフードバンクという活動を行っています。

(夏目みな美キャスター)
「こう見てみますとたくさん。冷蔵庫も冷凍庫も」

(セカンドハーベスト名古屋 松岡篤史 理事)
「この中にはいろいろな種類の食品、お菓子 肉 魚など、(配布用に)分けて入れてます」

(夏目キャスター)
「これは支援を必要とする方の手に渡る直前?」

(セカンドハーベスト名古屋 松岡篤史 理事)
「直前ですね。きょう渡します」

(セカンドハーベスト名古屋 松岡篤史 理事)
「電気やガスが止まった世帯には、スポーツドリンク・レトルト食品・菓子などを渡している」

(夏目キャスター)「ギリギリで生活している人は温めることもできないから、そのまま摂取できるものをお送りするということですか。

(セカンドハーベスト名古屋 松岡篤史 理事)
「水しか使えない方はアルファ米(水を注ぐだけで米飯が実食可能)になります」

様々な食品が並ぶが…実は食品不足

野菜や缶詰そしてレトルト食品など様々な食品が豊富に並んでいますが、実は今…

(セカンドハーベスト名古屋 松岡篤史 理事)
「元々は壁が見えないほど(食品が)積んであったが、今は3割減になった」

提供される食料品が減り続けているんです。その背景は企業の「食品ロス対策」。

生産調整して在庫を減らしたため、寄付にまわる余剰生産分も減り、寄付そのものが減っているんです。
支援物資はコロナ禍前の7割程度しか集まりません。

(セカンドハーベスト名古屋 松岡篤史 理事)
「ウクライナ侵攻以降は特に少なくなりました。(食品の)入荷量が減った」

物価高や国際紛争でフードバンクの備蓄が減る一方、生活が苦しく支援を必要とする人はむしろ増えています。こうした中で…

(夏目キャスター)
「物価高で子ども食堂も難しい運営を迫られているところが多いですが、あるアイデアで乗り切った子ども食堂もあるんです」

ユニークな方法で運営されている子ども食堂も

子どもたちに暖かい食事をと全国で広がっている「子ども食堂」。この6年で20倍以上に増えましたが、愛知県蟹江町では…

野菜は地元農家の寄付や自分たちで栽培したものでまかない、何より運営に大きな特徴があります。

(夏目キャスター)
「子ども食堂のオープンが5時半、あと数分です。案内看板も子どもたちの手書きです。肝心のメニューはここに書いてあります」

この日のメニューは、さつまいもごはんと豆腐ハンバーグ、そしてデザートの3品。

調理は子どもたちが担当!

調理を担当するのが…子どもたちです。

(夏目キャスター)「なぜ、おいものごはんにしたの?」

(調理担当の子ども)「やっぱり秋だなって感じがして、おいしそうだから」
「おいしくな~れ♡」

(夏目キャスター)「いま何作ってるの?」
(調理担当の子ども)「教えない…ナイショ」(笑)

(まじかるcook 近藤ゆり 代表)
「子どもたちが作って地域の方にふるまう、本当の子ども食堂です。
子どもたちがみんなに提供するのを大事にしています」

運営は蟹江町在住の料理研究家、近藤ゆりさん。
近藤さんは子ども向けの料理教室も開催していて、子ども食堂で提供する食事を作っているのはそこの子どもたちです。

(夏目キャスター)「きょう何人分作るの?」
(調理担当の子ども)「きょうは50人分作ります」

毎回食事作りに参加しているという9歳の男の子。
大量のサツマイモを手際よく切っていました。フライパンで肉だねを焼いて、慣れた手つきでメニューを仕上げていきます。

物価の高騰など厳しい環境の中 さまざまな工夫で乗り切る

子ども食堂を直撃している物価の高騰と食材の寄付が減っている現実。
愛知県は今年5月、およそ1700万円の予算を組んで食材費の支援を始めました。

こうした中、蟹江町の子ども食堂では、食材の一部は農家からの提供、開催場所もスポーツクラブにタダで貸してもらうなど、地元の住民に支えられています。

更に料理教室の月謝を食材費に充て、生徒たちが料理を作ることで人手もまかなっています。大人も子どもも無料。誰でも食べに来られます。

さて開店直前。

(炊飯器のフタを開けると…)「うわー、おいしそう」

サツマイモご飯も美味しそうに仕上ったようです。そして…

仕事の分担も子どもたちで決めています。
盛り付けや接客、そして配膳なども、子どもたちが話し合って決めていきます。

利用客も料理を作る子どもたちもうれしい

(運営する子どもたち)「ただ今から開店します」「何名さまですか?」

オープンして間もなく満席に。
子ども一人から親子連れなど、およそ50人が集まりました。

(夏目キャスター)
「画期的だなと思ったのは、運営に回る子どもたちは、お料理教室としてのお金を払うじゃないですか。今度はそれを子ども食堂の食材を買ったりする運営費に回せるという仕組みが、シンプルにすごいなと」

(まじかるcook 近藤ゆり 代表)
「(始めたきっかけは)せっかく料理教室に行って作ってきたので、お母さんだけではなくて、地域の方たちにも提供したいと思った」

利用者に話を聞いてみると…

(夏目キャスター)
「お子さん3人いらっしゃると、やはり食費とか、どうですかこのところの物価高」

(子ども連れの母親)
「それは皆さん困っていると思います。肉とかおやつをよく食べるから。
(ここは)他の(子ども食堂)とは違うから、本当にすごいと思います」

(娘が料理教室に通う母親)
「自分で作ると野菜をちゃんと食べてくれるので、とてもうれしかったです」

そして料理を作った子どもたちは…

(料理教室に通う12歳)
「ごはんを作って、みんなが笑顔になるところが、ごはんを作る楽しさが学べるところが良いです」

子どもたちに暖かい食事をと全国に広がった子ども食堂。
モノ不足でその存続も危ぶまれる中、国には本腰を入れた貧困対策が求められます。

2023年11月24日放送 CBCテレビ「チャント!」より

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