重なるかけ声「わっしょい」「Wasshoi」 秩父夜祭、外国人観光客が“曳き手体験” コロナ禍経て4年ぶり復活

本町屋台の曳き回しに参加する外国人観光客=2日午後1時ごろ、埼玉県秩父市街地

 秩父夜祭宵宮の2日、外国人観光客5人が本町屋台の曳(ひ)き回しを体験した。町会の鉢巻きと手袋を身に着け、「わっしょい」のかけ声とともに、重さ約12トンの豪華な屋台を秩父神社付近から約1.5キロの道のりを巡行。参加者たちが見せた爽快な笑顔は、コロナ禍で低迷が続いている埼玉県秩父地域のインバウンド需要回復に、一筋の光をもたらした。

 外国人観光客の曳き回し体験は、秩父夜祭がユネスコ無形文化遺産に登録された2016年から、秩父地域おもてなし観光公社が企画。コロナ禍の影響で中止が続き、今回4年ぶりに実施した。11月から同公社ホームページなどで参加者を募集し、今年はアメリカ、フランス、中国、台湾国籍の5人が申し込んだ。

 参加者は午前11時に西武鉄道西武秩父駅前に集合し、同公社職員案内の下、秩父神社へ出発。途中、3日の大祭で屋台・笠鉾(かさぼこ)計6基が集結する市役所前の御旅所や、クライマックスの舞台となる団子坂などを見学。参加者は祭りムード漂う街全体を何度も見回し、「素晴らしい」などと歓喜の声を上げた。

 秩父神社に到着すると、慣れない手つきで鉢巻きを縛り、本町町会メンバーの輪に参加。屋台の縄を握り締め、紅白じゅばんを着た囃(はや)し手を乗せて、堂々と市街地を巡った。

 都内から参加したイギリス国籍のギョーム・ジャマルさん(33)は、夜祭を見るのは19年以来2回目。「全国各地の祭りを巡っているが、12月の祭りといえばやはり秩父夜祭。山車の豪華さが格別」と笑顔を見せた。米国籍のアメーンダさん(30)は「前から山車を引いてみたかったが、コロナ禍が続き、なかなか機会がなかった。街の人と一体になれて興奮した」と目を輝かせた。

 同公社によると、19年度は秩父地域に約13万3千人の外国人観光客が訪れていたが、コロナ禍の21年度は約7400人、22年度は1万5700人だった。外国人観光客の屋台曳き回し体験も、コロナ禍前は毎年60人ほどの申し込みを受けていた。

 ナビゲーターを務めた同公社の保泉友美さんは「今年は人手が戻ってきている感覚はあるが、まだまだ外国人観光客は少なく、完全回復とはいっていない。この企画は毎回好評で、地元の方たちも快く協力してくれるので、来年以降も継続し、多くの外国人に祭り文化を伝えていきたい」と話していた。

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