猫スコティッシュフォールドの「折れ耳」は軟骨の形成異常…遺伝性の病気「骨軟骨異形成症」とは【ペットドクター相談室】

相談者ソラママさんの投稿写真

常に伸びをしています。寝た後とか移動する時。先日は少し前足を引きずっていたような気がしました。なぜかすぐに立ち上がり、猫がこんなに頻繁に2本脚で立つのかと不思議なくらいです。足腰の骨格が少し弱い気がするのですが一度獣医さんに相談した方が良いのでしょうか?(スコティッシュフォールド、ソラママさんの相談)【お答えします】福井県獣医師会 開業部会 なかほ犬と猫の病院(福井県大野市)酒井康一郎院長

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こちらの質問にお答えいたします。ご相談の「伸びをする、前足を引きずる、2本足で立つ」というのは足の痛みや違和感からきている可能性があります。猫ちゃんの品種がスコティッシュフォールドということで、これらの症状からスコティッシュフォールドの骨軟骨異形成症という病気を第一に考えたいと思います。

「骨軟骨異形成症」の病態

この病気は、骨の成長と関節軟骨の形成に影響を及ぼし、手足と尻尾に進行性の骨格変形が現れる遺伝性の病気です。スコティッシュフォールドといえば、「折れ耳」が特徴ですが、この折れ耳はもともと軟骨の形成異常が原因であらわれています。そのため折れ耳のスコティッシュフォールドには100%この病気があります。

この病気の発症年齢、重症度や進行具合にはばらつきがあります。発症年齢は5ヶ月~6歳齢と様々です。症状の程度も、症状が無いものから歩けずに寝たきりになるぐらいの重度のものまで様々あります。

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代表的な症状は?

代表的な症状としては以下のものがあります。 ・骨瘤(こつりゅう) ・痛み ・体のこわばり

骨瘤 骨瘤は軟骨のコブが手足や尻尾の関節に出来てくるものです。足底に骨瘤が出来た場合、コブで膨らんだ部位の皮膚が接地面と擦れて皮膚に潰瘍病変が出来てしまうことがあります。

痛み 進行して骨の変形がひどくなることで変形性関節炎を起こし、痛みによって日常生活に様々な支障をきたすことがあります。また病変部位の周りの神経を圧迫するため、神経痛を引き起こします。スコティッシュフォールドのもう一つの特徴の「スコ座り」は、非常に愛らしい格好ですが、このスコ座りも痛みが原因で通常の座り方ができないためとも考えられます。

体のこわばり 軟骨は通常、骨の周りを覆って関節がスムーズに動く役割をします。この病気では軟骨が固く大きくなり、関節の動きに障害を引き起こします。そのため正常な猫に比べてスムーズに動くことが出来ず、ぎこちない動きに見えてしまいます。

この病気による症状には以下のようなものがあります。 ・爪切りや、足先を触ると嫌がるようになる。 ・以前よりも積極的に遊ばなくなる。 ・おとなしくじっとしている時間が増える。 ・跛行(びっこ)がある、ぎこちない歩き方をする。 ・ジャンプをいやがる、高いところから降りるのをためらう。 ・毛づくろいをする回数が減る。

治療法はある?対症療法は…

スコティッシュフォールドの骨軟骨異形成症は遺伝性の病気であり、残念ながら根本的な治療はありません。明確なガイドラインは現在存在しませんが、主に関節炎や痛みの緩和といった対症療法を行います。鎮痛剤やサプリメントを用いて痛みをコントロールすることで、上手につきあっていく必要があります。また、お家では猫ちゃんの負担を減らす環境づくりが大切となります。

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