「うわ、見てしまった」 それでも勝った蝉川泰果のメンタル

同世代の中島は気になる存在(撮影/中野義昌)

◇国内男子◇ゴルフ日本シリーズJTカップ 最終日(3日)◇東京よみうりCC(東京)◇7023yd(パー70)◇晴れ(観衆5033人)

パワーを武器にアグレッシブに突き進む蝉川泰果は、華々しい功績とは裏腹にメンタル面が課題だった。「他人のスコアを意識すると、良くない傾向がある」。だから最終組で回ったこの日も、16番までスコアボードは絶対に見なかった。

中島啓太と首位に並んで迎えた最終日も、プレッシャーとの戦いだった。優勝を競うのは、同世代の中でも「注目して見ている」と意識する中島。2番(パー3)で2m弱につけてバーディを先行すると、5番で2.5mのフックラインを決め切り、2打差をつけて単独首位に立った。

トップから落ちることなく終盤を迎えたが、「絶対に見ない」と決めていたスコアボードが16番で目に入った。1打差2位には中島、2打差には金谷拓実の名前。「うわ、見てしまった」と思ったとたん、2.5mのパーパットを外した。それでも、直後のパー5はこれまで3日間で1イーグル2バーディを奪ったチャンスホール。この日もフェアウェイから2打目で乗せてバーディを奪い、単独首位に戻って最終ホールを迎えた。

ダボを打った18番、きょうは右手前にショート(撮影/中野義昌)

3日目にピン上につけてダブルボギーをたたいた18番(パー3)。この日は予想通り、右手前にピンが切られていた。「ティショットは、めちゃくちゃ緊張していたけど」と奥を警戒して4Iを握ったティショットは、「当たりが薄くて」と、25ydほど右手前にショートした。「寄せないと勝てない」とダブルボギーも覚悟した第2打は「うまくスピンがかかった」とピン40cmに寄ってくれた。

一度マークしてウイニングパットを残し、最終ホールをパーでフィニッシュ。「きのうのダボで、また勝てないのかなと頭をよぎった。すごくうれしい」と4月「関西オープン」以来のプロ2勝目を挙げた。

勝てなかった8カ月間は「ズタボロだった」と振り返る。中島が夏場にほぼ毎週のように優勝争いを演じる姿を見ながら、自身はなかなか優勝に届かない。ディフェンディングチャンピオンとして臨んだ9月「パナソニックオープン」も予選落ち。練習をしないと不安になるが、「練習法も、考え過ぎてしまう」と連戦の中で気持ちの切り替えもうまくできない。

18番のパーパット(撮影/中野義昌)

モチベーションが保てない時期が続く中、気持ちの整理がついたのは11月「マイナビABCチャンピオンシップ」前の試合がなかった1週間。同大会を3位で終え、「ダンロップフェニックス」2位、「カシオワールドオープン」10位と好成績を残し、トップ選手が集う最終戦でプロ2勝目をつかんだ。

賞金ランキングを3位から2位に上げてシーズンを終え、上位3位に与えられる欧州ツアー出場権を獲得。来季は日本に主軸を置きながら、海外へのスポット参戦を見込んでいる。「海外で1勝するのを目標に」と自信を取り戻し、シーズンを締めくくった。(東京都稲城市/谷口愛純)

中島啓太との優勝争いを制した(撮影/中野義昌)

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