阪神・淡路で被災したまちの再生願う、中州の石積みオブジェ「生」 増水で流出も、兵庫・武庫川に再び現れる

1日目の石積み作業を終えた参加者らと「生」の字=宝塚市の武庫川

 阪神・淡路大震災で被災したまちの再生を願い、石積みで「生」の文字を浮かび上がらせるオブジェの制作が2日、兵庫県宝塚市の武庫川中州であった。ボランティアとして集まった市民らが3日に完成させ、来年1月16日、市内の犠牲者119人と同数の懐中電灯でともして祈りをささげる。

 石積みオブジェは震災から10年たった2005年1月、同市在住の現代美術家、大野良平さん(64)が初めて制作。10年に市民団体「記憶の中の『生』再現プロジェクト」を立ち上げて以来、川の増水で流失する度にボランティアを募って修復している。21年12月に作ったオブジェは今春、大雨による増水で流失し、今回13代目となる。

 オブジェは縦20メートル、横10メートル。初日は60人が参加し、川の中州に散らばった大小さまざまな石を80センチほどの高さになるよう丁寧に積み上げた。石には犠牲者への鎮魂の思いを込めて「命」「平和」などの言葉を墨で書き添えた。

 「オブジェを作り続けることは何度でも再生するまちや人の心に重なる」と大野さん。母親と初めて参加した宝塚第一小2年の男児(8)は「オブジェが流されるのは仕方がない。何度も作ればいい」と汗を拭った。

 オブジェは宝塚大橋から見ることができる。(貝原加奈)

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