犯罪被害者支援に格差 茨城・水戸で講演会 遺族「不公平感じる」

犯罪被害者の支援について講演する辻内衣子さん=水戸市千波町のザ・ヒロサワ・シティ会館

犯罪被害者の遺族による講演会(いばらき被害者支援センター主催)が11月28日、茨城県水戸市千波町のザ・ヒロサワ・シティ会館(県民文化センター)で開かれた。事件で夫を失い、現在は東京都人権部で被害者等支援専門員を務める辻内衣子さん(65)が自身の経験や被害者が必要とする支援について訴えた。自治体関係者など約150人が耳を傾けた。

辻内さんによると、夫の鏡人さん=当時(46)=は2000年12月、自転車で帰宅途中に一方通行の道路を逆走してきた軽トラックにはねられて死亡した。警察からは「(加害者が)故意にひいたと言っている」と伝えられた。

突然夫を失った辻内さんには、警察の事情聴取や、葬式準備、親戚への連絡など、こなすべき事柄が考える間もなく押し寄せた。悲しんでいる余裕も全くなく、「闇の中を進んでいるようだった。一緒に伴走してくれる人が欲しかった」とつらかった体験を吐露した。

子育てや住居をはじめとした経済的支援や専任の支援専門員の配置、弁護士費用の助成など、犯罪被害者支援条例が制定されている中野区と東京都の支援制度も紹介。条例が制定されている自治体は少なく、被害者が受けられる支援に格差が生じているとして「不公平さを感じる」と指摘した。

辻内さんは、「これから被害に遭う人たちに、自分と同じ思いをさせたくない」との強い思いが被害者支援に携わる動機につながったという。被害者支援で自治体は重要な役割を持っていると強調し、「支援が届いていない被害者がまだたくさんいる。市町村に被害者をつなぐ役割の人が必要」と訴えた。

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