不法投棄撲滅目指す 解体現場など監視 機動調査員が奔走 捨てづらい県へ 茨城

解体業者に不審な解体現場の情報提供を依頼する機動調査員(両端)=県央地域

相次ぐ産業廃棄物の不法投棄などを抑止しようと、茨城県が2021年に立ち上げた「機動調査員」。県警OBら10人で構成され、県内各地を昼夜問わず巡回する。同年度以降、不法投棄の新規件数が2年連続で減少するなど一定の効果が出てきた。最近では建設系の産業廃棄物が約9割を占めることから、解体現場のパトロールを強化。違法業者にとって「捨てづらい県」を目指し、監視の目を光らせている。

「解体の施工方法は決まっていますか」「処分先はどちらになりますか」。11月下旬、2人の機動調査員が県央地域の解体現場を訪問し、業者に聞き取りを実施した。業者の50代男性は解体中の工場と倉庫を案内し、廃棄物は分別して処分すると説明。その上で書類を示し、品目別の処分先を伝えていた。

「ミンチ解体ではないですよね」。機動調査員が話を振ると、男性は「今どきそれをやっている業者は怪しい」と応じた。ミンチ解体とは廃棄物を分別せず、重機で一気に取り壊す方法だ。男性によると、分別しないため人件費が浮き、工期も短くて済むが、分類が「混合廃棄物」となり処理費用が膨大になるため採算が取れない。違法業者は比較的安価で処分を引き受け、不法投棄することで不当な利益を得ているという。

機動調査員は「適正価格で請け負っている業者の利益を守ることも使命の一つ」と強調。男性は「警察と連携し、徹底的に取り締まってほしい」と訴えた。

機動調査員は県不法投棄対策室長直轄の組織で、各県民センターなどに拠点を置く。主な業務はパトロールで、同室長が直近の不法投棄や不適正残土の事案を分析し、巡回先を指示。最近では不法投棄の約9割が「建設系」のため、解体現場の巡回を強化している。その他、通報があれば不法投棄などの現場に急行し、県警や自治体と連携し、早期解決を図る。

同室は機動調査員などの取り組みに一定の手応えを感じている。不法投棄の新規発生は101件だった18年度以降、19年度が120件、20年度は197件と急増。このため同室は21年度に機動調査員を採用したほか、画像が投稿できる通報アプリの導入や情報提供者への報奨金制度の運用も開始した。すると、同年度は171件、22年度は87件と大幅に減少した。

同室の高島茂之室長は「今後も機動調査員を柔軟に運用していきたい」とし、「違法業者に『茨城は捨てづらい』と思わせるためには、住民の監視の目も欠かせない。不審な業者を見かけたら通報してほしい」と呼びかけた。

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