50ccバイクで時速117キロ! 映画監督の近兼拓史さん、世界最速の自己記録、非公認ながら更新

自身が2019年に記録した50ccバイクの最速記録を塗り替えた近兼拓史さん。背景は記録樹立の瞬間の映像=ヱビスシネマ。

 兵庫県丹波市のミニシアター「ヱビスシネマ。」支配人で映画監督の近兼拓史(ちかかねたくし)さん(61)=同県西宮市=が秋田県で11月下旬、自身の保持する50ccバイクの世界最速記録を非公認ながら更新した。今夏に本来、公式測定の舞台となるはずだった米国の国際大会は、渡米後に中止に。不運と失意をはねのけて国内での走行を模索し、東北で時速117.05キロという偉業を成し遂げた。(那谷享平)

 近兼さんは映画撮影で知り合った金属加工会社などとプロジェクトを組み、日本の精密加工技術で造り上げたマシンで世界最速に挑んでいる。毎夏に米ユタ州である国際大会「ボンネビル・モーターサイクル・スピード・トライアルズ」に2018年から参戦し、19年に50ccと125ccの両クラスで世界記録を樹立。いまだ破られていない。

 20年から新型コロナウイルス禍などで大会の中止や不参加が続き、今年8月、4年ぶりの新記録を期して渡米。しかし、直後に大会が悪天候で中止になり、開発や輸送など約2千万円かけた挑戦は一度も走ることなく水泡に帰した。

 「改良を加え、更新は確実と期待していたマシン。なんとか走らせたい」。心身ともに疲労困憊(こんぱい)の中、滞在先から連絡したのが、日本随一の長い直線がある「大潟村ソーラースポーツライン」(秋田県大潟村)だった。交渉の末、11月22、23日に公開テスト走行できることになった。

 計測は125ccと50ccのマシン2台で実施。米国の本番と可能な限り似た条件を用意した。1キロの助走を設け、計測区間の直線400メートルを走り抜ける平均時速を千分の1秒単位で測った。

 テレビカメラも立ち会い、迎えた本番。125ccは米国との環境の違いに対応できず測定前に故障し、50ccのみで2日間に計7回走った。19年から15キロ軽量化したマシンは3回目で公式世界記録の時速約101キロを上回り、6回目で同117.05キロに達した。

 スタッフたちと抱き合って喜んだ近兼さん。「日本の技術、メード・イン・ジャパンのすごさを証明できた」。失望から自らを奮い立たせたのは「無理だと思われることも、できると示したい。応援してくれた人の技術と熱意を多くの人に伝えたい」との思いだったという。

 近兼さんは「ボンネビルの無念に一矢報いたが、あくまで非公認。米国で公式記録を残したい」と来夏への意欲を取り戻した様子。ただ、現時点で予算はなくプロジェクトは依然、危機的状況。今後、秋田での実績を材料に協賛を募る考えだ。協賛などの受け付けはコドルニスTEL0795.88.5910

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