加害者にも被害者にもならない社会を 集団暴行事件で息子失った高松さん、高校生に呼び掛ける 兵庫・尼崎

集団暴行死事件で亡くなった高松聡至さんのパネルと並び、生命の大切さを訴える母親の高松由美子さん=尼崎市塚口町5、尼崎北高校

 兵庫県稲美町で1997年、元同級生らによる集団暴行で死亡した高校1年の高松聡至(さとし)さん=当時(15)=の母高松由美子さん(69)=同町=が、尼崎北高校(同県尼崎市塚口町5)で講演した。「突然息子を奪われ、家族の未来も生きる気力も無くなった。これが犯罪に遭うということ」と語り、「加害者にも被害者にもならない社会をつくってほしい」と呼びかけた。(篠原拓真)

 事件は97年8月23日深夜に発生した。当時14~16歳の少年10人に呼び出され、自宅近くの神社で殴る蹴るのほか、鉄パイプでの殴打やバイクで体をひくなどの暴行を受けた。聡至さんは中学時代の非行から抜けだし高校に入学しており、高松さんは、暴行はグループとの付き合いをやめたのが気にくわなかったからという話も聞いたという。

 高松さんは、顔が腫れ上がりどす黒く変色した聡至さんの様子を振り返りながら、「この一発を我慢すれば帰られると思ったのか、お母さん助けてと言ったのか。今も助けられなかったことの無力さが心に沈んでいる」と涙を浮かべた。

 また、被害に遭うまでは、事件は人ごとで無縁と思っていたことを打ち明け、「『明日はわが身』と伝えることが私の責任と思った。犯罪、事件の怖さを考えてほしい。どんな理由があっても生命を奪うことはしてはいけない」と訴えた。

 講演は1年生約280人が出席し、女子生徒(16)は「実際にニュースを見ても人ごとと思っていた。これからは何をどうすればいいかを考えたい」と話した。

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