健康保険、税金、年金…定年前に準備しておくべきこと5つ

いざ定年を向かえると、さまざまな手続きが必要になります。手続きには期限が設けられているものが多いため、直前になって慌てることのないように、事前にどのような準備をしておくべきかを知っておくと安心です。

今回は、定年前に準備しておく内容について解説します。


ライフプランを立てる

定年が近づいたときに、まず行なっておきたいのは、定年後のライフプランを立てることです。定年後にどのような生活を送りたいかを夫婦で話し合うことで、どのくらいの資金が必要になるかを把握できます。

生命保険文化センター「老後の生活費はいくらくらい必要と考える?」によると、老後を夫婦2人で送るうえで必要な生活費の平均は、最低で月23万2000円です。さらにゆとりのある老後を過ごしたいなら、生活費の平均は月約38万円です。

50歳以降に届くねんきん定期便や、会社の規定などから想定される年金、退職金額を把握し、不足が発生しないかどうかを確認しておきましょう。

また、ライフプランを立てるうえで、自分が介護状態になった際にどのようにしてもらいたいかを考えることも大切です。公的な介護サービスだけでいいのか、もしくは民間の介護施設を利用したいのかで必要な金額も変わります。

不足が発生するなら、生活水準を見直すか、さらに運用などで資金を増やす方法も考えなければなりません。

そのためにも、ライフプランについては、定年予定の5年前までにはある程度の見通しを立てておきましょう。その後、具体的な退職金額などが分かるにつれ、見直していくことをおすすめします。

健康保険について

定年退職後に加入する健康保険についても考えておく必要があります。会社員なら、現在加入している健康保険組合の任意継続被保険者になるか、国民健康保険の被保険者になるかのいずれかを選ばなければなりません。

●任意継続のメリット
従来加入していた健康保険組合のサービスが引き続き受けられる点が、任意継続被保険者になる大きなメリットです。特に、健康保険組合によっては、年に1度の人間ドックの費用を補助してくれるところもあります。

国民健康保険でも無料検診やがん検診などを行なっていますが、自分で申込む必要があるほか、一部の検診では自己負担が発生します。

●任意継続のデメリット
任意継続被保険者になると、それまで会社が半分負担してくれていた保険料を、全額負担しなければなりません。保険料は加入している健康保険組合によって異なりますが、負担が大きくなる点には注意しておきましょう。

また、任意継続被保険者期間は2年間ですが、1度任意継続被保険者になることを選択した場合、原則として途中で止めることはできません。

国民健康保険料は、前年の所得によって計算されますので、場合によっては国民健康保険に加入する方が保険料は安くなる可能性もあります。

任意継続被保険者になるには、退職した日の翌日から20日以内に手続きを行なう必要がありますし、国民健康保険に加入するなら、退職日の翌日から14日以内に手続きをしなければならないため、事前によく考えて決めるようにしましょう。

税金について

退職後に一番に気になるのは退職金に関する申告ですが、退職金以外にも注意しなければならない手続きがあります。

●退職金
退職金については、退職所得控除の対象になります。退職金を受け取る際に、必ず会社に対して「退職所得の受給に関する申告書」を提出してください。提出を忘れると、退職所得控除の対象にならず、退職金額に対して20.42%の税金が源泉徴収されてしまいます。もちろん、後で確定申告することで差額の還付を受けられますが、その分手間もかかってしまうため、申告書の提出を忘れないようにしましょう。

●所得税
退職後に別の会社に再就職した場合、所得税や住民税は転職先の年末調整で行なわれるため、確定申告の必要はありません。

ただし、退職後に事業を始めるなど、別の所得が発生した場合は、所得金額に応じた所得税を納めるための確定申告が必要です。

●住民税
退職した翌年には、退職した年の所得に応じた住民税を納めなければなりません。所得金額によっては住民税の額も高額になる可能性がありますので、所得金額の10%程度の金額を準備しておく必要があります。

雇用保険について

定年退職後にさらに働きたいと考えているなら、ハローワークに申請することで、手当を受けとれます。ただし、年金と失業保険の同時給付はできませんので、年金を受け取るのがいいのか、それとも失業保険を受け取るのがいいのかを判断してから申請する必要があります。

●失業保険
失業手当の額は在職中の賃金日額によって決まります。また、企業に20年以上務めていたなら、給付日数は最大150日です。

●高齢者求職者給付金
65歳以降に定年退職した場合には、高齢者求職者給付金の対象となり、一時金を受け取れます。

いずれにせよ、再就職の気持ちがあることと、ハローワークへの申請が必要です。手続きには期限がありますので、定年後に働くかどうかを早めに決め、働く意思があるなら、忘れずに手続きを行ないましょう。

年金について

公的年金は原則として65歳から受け取れますが、私的年金は加入している企業の年金制度や個人年金保険などの契約によって異なります。

●公的年金
公的年金については、受給開始年齢に達する3ヵ月前から「年金請求書」が送られてきますので、案内のとおりに請求の手続きを行ないましょう

●私的年金
私的年金として、企業年金や確定拠出年金、個人年金保険があります。

個人年金保険は契約に基づいて支払われますが、企業年金は企業によって手続きが異なります。事前に会社に確認しておきましょう。

また、確定拠出年金は自分で受け取り時期を選べますので、受給権資格取得通知書が届いたら、受取開始時期や受け取り方法を決め、その時期が近づいたら必要書類を取り寄せて手続きを行ないます。手続きに時間がかかることも予想されますので、早めに手続きに取りかかるようにしましょう。

優先順位をつけながら、確実に行動に移すことが大切!

定年後は行なわなければならない手続きがたくさんあります。特に健康保険は手続きの期限が短いため注意しておきましょう。

そのほか、定年後をどう過ごすかを考え家計の見直しを行なうことや、保険の見直しなども考える必要があります。

何をやらなければならないか、そしてそれにかかる準備期間や手続きの期限などをまとめ、優先順位をつけたうえで、余裕を持った行動を心がけましょう。

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