「妙見の森ケーブル」運行終了、63年の歴史に幕 詰めかけたファン「寂しい」「ありがとう」 川西

手を上げて電車の出発を合図する能勢電鉄の西中哲郎社長(左)ら=川西市黒川

 兵庫県川西市黒川の妙見山で行楽客らに親しまれてきた「妙見の森ケーブル」(黒川-ケーブル山上駅)が3日、63年の歴史に幕を閉じた。最後の雄姿を一目見ようと始発から多くのファンが訪れ、思い出話に花を咲かせつつ別れを惜しんだ。(浮田志保)

 運営主体の能勢電鉄によると、ケーブルは1960年に開業。妙見山は都市部に近く、ケーブルを使えばより気軽に登れるため人気を集め、ピーク時の74年度には約20万人が利用した。一方で、マイカーの普及やレジャーの多様化などで利用客が減り、運転技術の継承も困難に。新型コロナ禍による影響が追い打ちとなり、2023年6月、1年後の廃止を公表。さらに同9月には12月3日に前倒して営業を終えることを決めた。ケーブルから乗り換えて山頂近くまで行けるリフトやバーベキュー施設、足湯などの事業も同時に終了するとした。

 この発表の後、妙見山には多くの人が足を運び、週末は連日長い行列ができるように。10、11月は昨年同期の約5倍となる延べ10万676人が訪れた。

 最終運行日の午前9時、麓の黒川駅で出発式が行われた。始発「ときめき号」の出発ベルが鳴り響くと、同電鉄の西中哲郎社長(60)らが手を上げて合図を送り、一礼。詰めかけたファンらが「ありがとう」とねぎらった。

 乗り込んだ人らは車窓から見える紅葉やレールを写真や動画に収めながら、約5分の旅を楽しんだ。還暦を迎え、現在は「第二の人生」を送っているという男性(74)ら会社の元同僚4人は、20年近く前から妙見山に登る。「いろいろと仕事の相談をした思い出深い場所。日常の一部だったものがなくなるのは寂しいね」

 大阪市の女性(45)=は長女(7)、次女(4)と最後の揺れを堪能した。毎年登山し、下りだけケーブルを使っているといい、「子どもたちはケーブルに見守られながら大きくなった。名残惜しいが、妙見山はなくならないので、今後も存分に歩きたい」と話した。

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