賃上げはまず大企業から、中小企業は? 経済アナリストが懸念する賃上げ対策の落とし穴

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜6:59~)。11月24日(金)放送の「FLAG NEWS」のコーナーでは、政府が進める物価高・賃上げ対策の後押しについて取り上げました。

◆投資減税、賃上げ要件延長、政府の思惑は?

政府・与党は、企業の研究開発や5G関連の投資を促すための法人税の減税措置について、賃上げや設備投資に消極的な大企業は対象外としている要件を延長する方向で調整に入ったことがわかりました。

2024年3月末が期限の予定ですが、賃上げ税制の拡充と併せて、岸田政権が最重要課題のひとつと位置付ける「物価上昇を上回る賃上げ」の実現を後押しする狙いです。

また、単純な延長ではなく賃上げ要求の水準を引き上げ、適用条件を厳しくする案も浮上しています。自民党と公明党の税制調査会が年末に向けた来年度税制改正作業で詳細を詰める方針です。

◆政府が進める方針を会社経営者や経済アナリストはどう見る?

この件に関し、株式会社POTETO Media代表取締役の古井康介さんは「そもそも政府が何をやろうとしているのかを岸田さんはわかりやすく言えていないんじゃないか」と懸念し、この政策の概要を解説します。

今回の措置は「物価高対策」と「賃上げ」、大きく2つの軸があるとした上で「物価高対策というのは、物価が上がっていることに対して少しでも使えるお金を増やそうと政府はしていて、減税や電気代・ガソリン代の補助をすることで使えるお金を増やし、なんとか賃上げまでの間を乗り切ってほしいというメッセージがある」と古井さん。

一方、賃上げに対しては、それを行う企業に法人税を減税することで後押しすることが狙いであり、「こうした体系的なメッセージがなぜ伝わっていかないのか」と疑問視。

会社を経営する古井さん同様、事業経営者でもあるキャスターの堀潤は一連の狙いを理解しつつも、「その額、枠組みは十分なのか。賃上げを促す手段は本当に法人税のアプローチなのか」と懐疑的で、特に賃上げに関しては「むしろ法人税よりも日々の社会保障費や消費税はどうなのか」とその方針に疑問を呈します。

この意見に、古井さんは同意しつつ「法人税は利益に関わるもので、なおかつ年に1回。そこまでインパクトが大きいものではなく、別の要因でコントロールできる。でも、社会保障費などは絶対に下がらないし、毎月取られるものなので」と経営者の厳しい現状を吐露します。

さらに堀は「社会保障費や消費税はものすごく負担感が強い」とも。従業員の給料を上げれば、同時に会社が支払う社会保障費も増え、会社の負担は大きくなるため「法人の社会保障費の支払額がものすごく重しになっていることをなぜもっと議論しないのか」と疑問視。

2人のやり取りを聞き、経済アナリストの池田健三郎さんは大きく頷きつつも、ある注意点を指摘します。現状、政府は賃上げのターゲットを大企業に定めています。というのも、大企業が賃上げをしないと中小企業に波及しないからで「大企業が賃上げするのはいいが、それによって会社から出るお金が増え、その分、下請け(中小企業)に払う分を抑制するような話になると、中小企業に(賃上げは)波及していかない」と危惧。

つまり、中小企業も賃上げできるような政策を打つ必要があり、なおかつ大企業に対しては自社だけが利益を被らないよう目を凝らす必要があると注意を促し、「大企業が(賃上げを)先行してやるのはいいが、トリクルダウンが起こらないと波及しない。そうするといつまでも物価高対策をやってくれと、給料以外のところからお金を引っ張ろうとみんな思ってしまい、非常に矛盾した政策になりがち」と池田さんは案じていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 6:59~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組X(旧Twitter):@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

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