ハイバウンス? それともローバウンス? 一周回って考えるウェッジ選び/ギアを愉しむ。

バンカーの基本は何ショット!?

Sand(バンカー)で使う専用クラブと考えれば答えはすぐに出てくる(撮影/高梨祥明)

ウェッジはハイバウンスがいいのか、ローバウンスなのか――。普遍的にゴルフメディアで取り上げられるテーマである。今日はこの疑問を解消するためのひとつの“考え方”を紹介したい。

ポイントは、ウェッジの本来の目的について考えること。現代ではピッチング、ギャップ(アプローチ)、サンド、ロブとバリエーション豊富な“ウェッジ類”が存在するが、起源は名手ジーン・サラゼンがバンカーの脱出用にスペシャルクラブ(ユーティリティ)として考案したサンドアイアン(1932年)が始まりとされている。

ソールに大きなアール(地面方向に対する出っ張り)を付け、エクスプロージョンショットを行いやすくしたサンドアイアン。インパクト直前にリーディングエッジ(フェース下部の刃)より先にソールを接地することで、砂の爆発とともにボールを打ち出すことができる特別なアイアンが登場した。言うなれば、砂上のボールを簡単に打ち出すために、“わざと”あるいは“あえて”ワンキックが入る工夫がなされたサンドウェッジの源流である。

ベン・ホーガンもアプローチ用は幅狭(左) バンカー用は幅広ソール(右)を使用(撮影/高梨祥明)

ハイバウンスウェッジやワイドソールウェッジは「地面で跳ねてしまう…」とよく言われる。だが、ソールにバウンス角を付けたり、幅を広くしたりする目的がインパクトより前に、ソールを接地させることにあるのだから、やわらかい砂の上ではなく硬いもの、例えば板の上で打とうとすれば跳ねるように感じてしまうのは当たり前。そもそもウェッジは、特定ショットを簡単にするユーティリティクラブなのだから、バンカーショット用としてバウンス効果はあったほうがいいのだ。

大きなオフセットもバンカー用ウェッジならでは

サンドウェッジには、バウンスの他にも大きな特徴がある。それは強いオフセット形状。シャフトの中心軸より後ろにリーディングエッジがあるほど、オフセットが強い状態と呼ばれる。

オフセットの強いヘッドは、インパクトのタイミングが出っ歯なクラブより遅くなるため「つかまり(フェースターン)がいい」と言われてることは多いが、実はそれはフルショットで使われるロングショット系のクラブの話であり、ウェッジの目的には当てはまらない。

ウェッジは元々アップライトでつかまりのいいクラブ。オフセットを付ける必要は…(撮影/高梨祥明)

強いオフセットが付けられたモデルが存在する理由は、ソールのバウンスと同じ。インパクトの直前で“わざと”あるいは“あえて”ワンキックが入りやすくするため。つまりバンカーからエクスプロージョンを行いやすくするための知恵、工夫が発端となっているのだ。

技巧派プレーヤーは、出っ歯ウェッジを選択することが多く、バンカーではフェースを大きく開く。リーディングエッジを後方に下げることで、ワンキックが入るオフセット状態を自ら作っているともいえる。アベレージゴルファーは、バンカー専用クラブで芝上のアプローチをしようと考えるから、「跳ねる…」というネガティブな感情が生まれてしまうのかもしれない。バンカーはバンカー、アプローチはアプローチと、それぞれの“専用ウェッジ”を持っていたほうが、余計なテクニックを覚える必要もなくなるはずなのに。(高梨祥明)

バウンスの必要性をウェッジの起源から探る(撮影/高梨祥明)

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