人命守る覚悟、ひしひしと 佐賀県警機動隊に記者が体験入隊 

専用の機械で車のドアをこじ開ける記者(奥)=佐賀市八丁畷町の県警機動隊本庁舎

 災害や重大事件に対応し、治安維持の“最後の砦(とりで)”と呼ばれる警察機動隊。佐賀県民の安心安全を守るために、彼らはどんな訓練を重ねているのだろうか。入社1年目の記者(25)が「一日体験入隊」に挑戦し、その一端に触れた。(司法担当・上田遊知)

 連日の寒波から一転して汗ばむ陽気となった11月下旬。新設された佐野常民像を目印に、佐賀市の県警機動隊本庁舎に車を走らせた。

 機動隊の歴史や業務内容について説明を受けた後、いよいよ装備を身に着ける。出動服と呼ばれる濃紺の服に袖を通すと、隊員がプロテクター、大きなヘルメット、鉄板の入った胸当てなどを次々に装着していく。総重量は約7キロにもなり、動くのにも一苦労だ。

 外に出ると約7キロの盾を渡され、ランニングが始まった。1周約150メートルのコースを集団でゆっくりと走り始めたものの、運動不足の体ではついて行くのがやっと。5周目で離脱してしまった。

 災害救助訓練も体験した。大雨災害での救助・復旧活動を念頭に、チェーンソーで木材を切断した。車内に取り残された人を救助する訓練では、約37トンの力で開閉できる機械を使ってドアの破壊を試みた。震える腕で重い機械を持ち上げたが、結局破壊には至らなかった。

 これだけでも十分ハードだが、装備や道具の重さに慣れるのは訓練以前の段階だという。1カ月100キロを目標に自主的にランニングをしているという入隊1年目の内田大貴巡査長(25)は「現場に着いてからが仕事なので、このくらいで疲れてはいられません」とさらりと話す。

 機動隊は力自慢の猛者たちの集まりというイメージだったが、全く違った。ヘトヘトになった記者に椅子を用意したり、こまめに水分補給をしてくれたりと、きめ細やかな気配りを感じた。普段から、重大事件の被害者や災害現場の被災者に思いやりを持って接しているからだろう。

 いつでも出動できるよう日頃から厳しい訓練をこなす隊員たち。「装備よりも人の命のほうが重かけん」。副隊長の言葉に、並々ならぬ覚悟を感じた。

 佐賀県警機動隊 隊員数約80人。銃火器に関する事件の制圧や爆発物の処理、水難救助や災害救助などを行う部隊に分かれ、今年7月に県内を襲った大雨では唐津市浜玉町や佐賀市富士町に出動した。来年に県内で開催される国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会でも警備を担う。

盾の重さに耐えきれず腕が落ちたところを指導される記者

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