主婦らが作る童話同人誌 子育ての難しさ、飼い猫との思い出、次のテーマは 代表の思い

「風のクレヨン」のバックナンバーを見つめる上田さん(宇治市折居台・市中央図書館)

 「この表現どうなんやろ」「構成変えた方がええんちゃうか」―。京都府宇治市内で月1回開かれる童話同人誌「風のクレヨン」の合評会。メンバーが創作した作品を読み合い、自由闊達(かったつ)に意見し合う。代表の上田惠子さん(79)は「初稿を出す時は今もドキドキする。こてんぱんに言われることもあるけど、読んでもらう中で力がついた」とほほ笑む。

 研さんのかいもあり、第15号が今秋、紫式部市民文化賞奨励賞(市など主催)に輝いた。

 その歴史は、今から40年近く前にさかのぼる。1985年に開かれた京都YMCAの童話創作教室をきっかけに、87年に同人誌作りが始まった。児童文学作家の吉橋通夫さんが、今も変わらず指導を続けてくれている。

 主婦の上田さんも、当初から活動に参加している。小学生のときにオルコットの「若草物語」を読んで以来、読書はずっと好き。母に叱られると、反省を手紙にして伝えた。「文章にした方が、口で言うより気持ちが伝わると思って」

 初めて投稿した作品は「ブランコとかあさん」(87年)で、母親としての子育ての難しさを表現。猫たちの恋模様を描く「恋の季節」(96年)は、飼い猫との思い出から生まれた。物語にお年寄りがよく登場するのは、子どもの頃の近所付き合いの影響とみる。「作品は自分史のようなもの。創作は生きがいであり、私の財産です」

 次に書くとすれば、テーマは「戦争」だという。07年に戦争体験者のメンバーの呼びかけで特集号「平和へ一歩」を発行した。上田さんは太平洋戦争末期に赤ん坊だった自分の話を母に聞き、エッセーにまとめた。今はロシアによるウクライナ侵攻やパレスチナ自治区ガザでの惨状を憂う。

 「なぜ戦争はなくならないのか。あかんということが伝え切れてないと思う。ただ、テーマは押しつけず、日常描写の中から子どもが感じ取れる作品にできたら」

 風のクレヨンの名には、作者ごとの自由なカラーが光るという意味が込められている。「この方は読書量がすごい」「文章が毅然(きぜん)としていて芯がある」。誌面をめくりながら、上田さんが語る。「創作は孤独で、苦しくもある。これまで続いたのは仲間に恵まれたから。今後は若い人も来てくれたらうれしいね」。宇治市宇治。

© 株式会社京都新聞社