もはや「事務的ミス」との言い訳は通用しまい。組織ぐるみで裏金作りが横行している疑惑が浮かび上がっている。
政治資金パーティーを巡り、自民党の派閥でパーティー券販売の収入を所属議員に還流させるキックバックが続けられ、最大派閥の安倍派で2022年までの5年間に1億円以上が裏金になった可能性があるという。
他派閥でも不透明なカネの流れが常態化しているとみられ、極めて深刻な問題だ。
政治資金規正法違反の疑いを視野に入れた検察の捜査とともに、当の自民党をはじめ政治の責任で実態を明らかにし、徹底的にメスを入れねばならない。
安倍派は、派閥のパーティー券販売で所属議員の当選回数などに応じノルマを設け、超えて集めた分はキックバックしていた疑いがある。超過分のやりとりは派閥、議員の収支報告書に記載はせず、議員側の裏金になる仕組みだ。こうした運用は長年続いていたとの指摘もある。
二階派も同様にノルマ超過分を還流させ、派閥収入の不記載は億単位に上る可能性がある。
当初、自民派閥は相次ぐ報告書訂正を記入のミス、漏れなどと説明してきたが、組織的、常習的な資金隠しが疑われよう。
新型コロナウイルス禍を経てパーティー再開と収支の不記載が急増したのは、都合の良い資金集めだからに他なるまい。自民派閥の収入の約8割に上る。
規正法は、癒着を防ぐ目的で政治家個人向けに企業・団体から寄付はできないが、パーティー券は購入者に規制がない。党本部・支部への寄付は年間5万円を超えると名前の記載が必要だが、パーティー券購入は1回20万円超の場合に限られ、大部分を匿名にして集められる。
企業・団体献金の「抜け道」になっているのは明らかだ。政党交付金で活動を支える一方、資金を国民の監視下に置くという規正法の空文化は甚だしい。
現制度では、出所不明やキックバックの金もパーティーの収支で記載すれば合法的に「ロンダリング(洗浄)」して政治資金に使える。あえて裏金にするのは、後ろ暗い使い道ではと見られても仕方なかろう。
詳細な収支報告と罰則強化で透明化を徹底し、パーティー券購入を含む企業・団体からの資金提供を全面禁止すべきだ。
安倍派の約100人をはじめ、多数の国会議員が関わるだけに、会計担当者らだけで差配したとは到底思えない。
安倍派の塩谷立座長は、キックバックの慣習を「そういう話はあったと思う」と一度認めた後、撤回した。現在の事務総長は党国対委員長で、歴代務めた官房長官、経済産業相も責任を免れない。
岸田文雄首相は「国民から疑念を持たれるのは大変遺憾」としつつ、具体的な動きは見えない。危機感の乏しさはどうしたことか。