<社説>内閣不信任案否決 選挙で民意突き付けよう

 民進、共産、社民、生活の野党4党が共同提出した安倍内閣不信任決議案は衆院本会議で、与党などの反対多数で否決された。 決議案は来年4月に予定していた消費税率10%への引き上げを、2年半再延期する安倍晋三首相の方針を踏まえて提出された。不信任の最大の理由は増税環境をつくり出せなかった「アベノミクスの失敗」である。

 4党は安全保障関連法の成立過程で首相が見せた立憲主義と平和主義を否定する姿勢、甘利明前経済再生担当相の金銭授受問題も不信任の理由に挙げた。

 民進党の岡田克也代表は決議案趣旨弁明で、米軍普天間飛行場移設問題に対する安倍内閣の強権的な姿勢について「沖縄に全く寄り添うことなく、法廷闘争にまで持ち込んだ」と批判した。

 決議案の提案理由には、国民の声が一定程度反映されている。否決されたとはいえ、与党は内閣不信任決議案提出の重みを真摯(しんし)に受け止めねばならない。にもかかわらず「粛々と否決」する自民党の姿に巨大与党のおごりが見える。

 首相は税率引き上げ延期を最初に決めた2014年11月、「再び延期することはないと断言する」と言明した。15年度税制改正では、経済情勢次第で消費税増税を停止できる「景気条項」を削除してもいる。

 ところが、首相は先進国首脳会議(伊勢志摩サミット)で世界経済が「リーマンショック前に似ている」との独自の論を展開した。政府内からも疑問視され、英仏首脳も否定した見解である。言葉に責任を持たず、消費税増税再延期の責任を世界経済に転嫁する姿勢は恥ずべきことである。到底認められない。

 安倍首相には反省もなければ、国民に対する責任を全うする姿勢も感じられない。選挙で民意を突き付けるしかない。

 そもそも社会保障の財源を消費税とすること自体、賛成できない。社会保障の財源不足を声高に叫ぶ一方で、法人税の実効税率を段階的に引き下げ、防衛予算に5兆円を超す巨費を割いている。

 税制や予算を大胆に見直すとともに、消費税増税は「延期」ではなく「撤回」すべきだ。増税再延期で子育て支援などへの影響も懸念されているが、国民との約束をこれ以上ほごにすることは許されない。

© 株式会社琉球新報社