夕方にムクドリが集まることで騒音や「ふん害」に悩むJR加古川駅南のベルデモール商店街で、岡山理科大(岡山市)の辻維周教授(68)による実証実験が始まった。鳥が嫌がる高周波音を発生させることでムクドリが集まらないようにし、通行人や店主らの悩みを解消しようという取り組み。効果や、いかに-。(中川 恵)
商店街入り口のケヤキにムクドリが集まるのは、例年9月半ばから11月半ば。通行人や店主らは鳴き声による騒音のほか散らばった羽根やふん、そのにおいに頭を抱える。加古川市はケヤキの剪定を検討したが木の生育を損なう可能性があり、商店街は「ほかの対策を」と求めていた。
辻教授は、野生動物が車と衝突して死ぬ「ロードキル」を防ぐ研究に取り組む。2019年以降、山梨県の自動車用品メーカー「T.M.WORKS」と連携し、高周波音を出す装置「鹿ソニック」を使って各地で実験を行う。今年3月からは萩・石見空港(島根県)でバードストライクが起きないよう、鳥向けに調整した「バードソニック」を設置する。
「お力になれるかもしれません」。本紙の報道で事態を知った辻教授は10月下旬、市に連絡を入れた。野生動物と人間の距離を保つことを目標とする辻教授に、市と商店街は賛同し、研究フィールドを1年間提供することにした。
例年ではムクドリを見なくなるはずの今月2日の午後5時前。JR加古川駅南の空に黒い大群がやってきて、葉が減ったケヤキに止まった。「これはひどい。100羽以上いますね」と辻教授。ケヤキの北側にあるクスノキにも止まろうとしたのを見逃さず「ケヤキとクスノキ、両方に(高周波が)届くようにした方がいいですね」と話した。
翌3日午前、市職員と「バードソニック」を設置した辻教授は別の現場に向かった。その夕方、いつものようにムクドリが現れ、ケヤキに止まった。だめなのか-。市土木総務課の橘利彦課長(59)は「逃げるかなと思ったけれど」と苦笑い。「ただ普段と動きが違うようにもみえた。(辻教授も)いっぺんには進まないと話していた。今日が第一歩」と前を見据える。今後も辻教授と周波数やスピーカーの向きを調整しながら様子を見ていくという。