ドミニク・バーロウ(サンアントニオ・スパーズ/オースティン・スパーズ)にインタビュー——「ツーウェイ契約で逆に良い緊張感を保っていられる」

サンアントニオ・スパーズでツーウェイ契約2年目に突入した20歳のドミニク・バーロウが、Gリーグのスパーズ傘下のチームであるオースティン・スパーズで、11月28日現在平均28.6点(リーグ1位)、7.2リバウンド、フィールドゴール成功率58.3%と素晴らしい数字を叩き出している。そのバーロウが、11月24日にGリーグでのホームアリーナであるオースティンHEBセンターで、日本のファンに向けたインタビューの時間をとってくれた。

NBA直下のマイナーリーグであるGリーグは日の目を見ない選手やチームが多いが、スパーズはGリーグ以前のDリーグの時代から積極的に選手の育成のためにこのマイナーリーグを活用してきた。本家サンアントニオで活躍する選手を多々輩出してきたオースティンだけに、バーロウも近い将来に才能をさらに開花させ、最高峰の舞台に活躍の場を広げる可能性が大いにある。

NBAサマーリーグでは高校時代のライバルに闘志を燃やしていた

——今シーズンはGリーグ2年目だけども、昨シーズンの平均9.5点、4.4リバウンドのアベレージに対して平均31点、9リバウンド(11月24日時点)と大きくジャンプをしているように見えるけど、何がそれを実現させている?

大まかには自信と慣れが影響している。昨年はNBAでどんなことが起こるのか予期できなかったけど、周囲のサポートも充実しているし、オフシーズンのワークアウトもこのジャンプを可能にしてくれた。

——サマーリーグでも良いパフォーマンスができていて、ラスベガスは僕も観に行ったけど、平均17得点に7.5リバウンドを記録して、(2023年のドラフト2位指名だった)ブランドン・ミラーとマッチアップしていたり、ミッドレンジのジャンプシュートも自信を持って沈めていた。サマーリーグに向けてのマインドセットはどういうものだった? 確かサマーリーグの時点では今の契約は勝ち取れていなかったと思うけど。

マインドセットというより、実はサマーリーグで対戦した選手は高校の同期が多かったんだ。だから皆のプレーをある程度知っていたということも影響している。僕が高校3年生のときに大見出しで騒がれた選手達がサマーリーグには大勢出ていたから、食ってかかってやろうという気持ちはあった。

——君はオーバータイム・エリート(米有力スポーツメディアの一つであるOvertime Sports Inc.が主催するエリートプレーヤー同士の競技会)が輩出したNBA選手だけども、NCAA ディビジョン1の大学に通うこともできたと思う。オーバータイム・エリートを選択した理由は?

オーバータイム・エリートが他とは違っていたことかな。彼らに声をかけてもらったときは、必ずしも試合に勝つことが目的ではなくて、「あなたをNBAでプレーさせることが目的だ」と話してくれた。どの大学もそういう話はしてくれなかった。大学でプレーして試合に勝つことにも興味はあったけど、若い選手として最終的な目標はNBAだったから、オーバータイム・エリートの話を聞いてからは彼らにオールインすることに決めたよ。

——2022年のドラフトでは指名されなかったけども、ドラフト直後にスパーズとツーウェイの契約を結ぶことになったね。契約に至った経緯はどんなだった? スパーズとワークアウトはしたの?

スパーズとドラフト前のワークアウトはあった。出来は最悪だったけどね。エージェントからは、予想していないチームから連絡が来ることもあるからと言われていたけど、正にそうなった。シュートは全然入らなかったけど、他の小さい動きにも注意を払いながらプレーしていたから、そういった点を評価してくれたのだと思う。とても感謝しているよ。

——チームと契約する前のスパーズの印象は?

素晴らしい組織だということ。選手の育成も本気で取り組むし、シーズン通して選手がケガなくプレーできるようにケアもしてくれる。グレッグ・ポポビッチHC、ティム・ダンカン、マヌ・ジノビリ、トニー・パーカーの偉大さが外から見ると目立ってしまうけれども、トップ選手だけでなく全選手に対して気づかいをしている。

——初めてグレッグ ポポビッチHCと対面したときのことを覚えている? 何かインスパイアされるようなことは言ってくれた?

いや、特に何も言ってくれなかったかな。「あなたは誰?」って聞かれたくらい(笑) 僕をイジろうとしたのかもしれないけど、彼が伝えたかったメッセージは、このチームで機会を得るには努力しなければいけないということだ。当時は夏だったから、誰がチームに残るのはわからない。ポポビッチHCからのリスペクトも勝ち取らなければいけなかったけど、自分にはそれができたと思うよ。

——2003年生まれだけども、スパーズの優勝は記憶にある?

覚えているよ。2003年にピストンズ勝って優勝したとき。

——2003年はネッツだね(笑)。ピストンズは2005年だよ。

2003年はネッツか…(笑)2007年のキャブスとのシリーズも覚えている。2014年のマイアミとのファイナルシリーズは鮮明に覚えているよ。

——スパーズというと5回の優勝が目立つけど、先に話してくれたように選手の育成にもとても真剣に取り組んでいる。若い選手としてスパーズに在籍していると、選手の育成へのアプローチが他のチームと違うなと感じることはある?

他のチームとの比較は難しいけども、スパーズに在籍してからとにかく毎日一緒にバスケットボールと向き合ってくれるし、コミュニケーションもとても良好なので、これ以上ない環境だと思っているよ。

——ツーウェイ契約プレーヤーであることは難しい? オースティンでプレーしながら、いつサンアントニオでプレーするかもわからないような状況だけれども?

確かにチャレンジに感じることもあるけど、良い緊張感を保っていられるから常にシャープでられるよ。(11月22日の)クリッパーズ戦には少し試合に出ることもできたけども、準備はできていた。日々どこに自分がいるのかわからない部分はあるけれど、ツーウェイプレーヤーとしてプレーできることは自分にとってはプラスだね。

——サンアントニオ・スパーズでは、試合に出場する機会は少ないかもしれないけれども、サンアントニオの選手と一緒にいることで何か学ぶことはある?

NBA選手の1日がどういうものなのかを学ぶことが多い。毎日のルーティンだったり、選手の習慣だったり。試合に勝つこともあれば、負けることもあるし、良いプレーができる日もあれば、そうでない日もある。常に安穏な姿勢を保つことも学んでいる。

——最後の質問だけども、何か日本について知っていることは?

正直あまり日本のことは知らないけど、アニメはいくつか知っているよ。「ONE PUNCH MAN(ワンパンマン=集英社「となりのヤングジャンプ」の漫画)」は見たね。それくらいかな。でもいつか日本に旅行に行ってみたいと思っているよ。

インタビュー当日の小谷氏とバーロウ(写真/小谷氏提供)

この企画は、スパーズのスーパーファンとして知られる小谷太郎さんが立ち上げた「Paint it Silver & Black!」プロジェクトの一環として小谷さんの全面的協力の下でスパーズ周辺の様々な話題を取り上げています。不定期ながら随時楽しい企画をお送りしていきますので、乞うご期待!

© 日本文化出版株式会社