FL5シビックがポール、カローラGRSが最終トップ4独占もFK8を操る18歳が初王座に/TCR南米最終戦

 選手権首位を守ってきた18歳の新鋭、イグナシオ・モンテネグロ(スクアドラ・マルティーノ/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)に対し、TOYOTA GAZOO Racingアルゼンティーナ謹製の新型モデルをドライブしてきたベルナルド・ラヴァー(トヨタ・チーム・アルゼンティーナ/トヨタ・カローラGRS TCR)がわずか9点差に迫るなど、緊迫の状況でファイナルを迎えたTCRサウスアメリカ・シリーズ第10戦は、初日からホンダvsトヨタの日本車対決構図に。

 予選では地元ブラジル・シリーズ登録で国内戦に挑むファン-マヌエル・カゼッラ(スクアドラ・マルティーノ/FL5型ホンダ・シビック・タイプR TCR)がポールポジションを奪うと、レース1こそラファエル鈴木(PMOモータースポーツ/リンク&コー03 TCR)が勝利を飾るも、今季最終のレース2ではディエゴ・ヌネス(コブラ・レーシング/トヨタ・カローラGRS TCR)以下4台のトヨタが上位を独占。一方でこの週末を7位、8位と初タイトルへの重圧に苦しんだモンテネグロはなんとか16点差でシーズンを終え、待望のドライバーズチャンピオンを獲得している。

 新生TCRワールドツアーとの連戦を経て、10月下旬の前戦ヴェロチッタよりTCRブラジルとの併催に回帰した南半球を代表するリージョン選手権だが、引き続きブラジル国内のカスカバルで12月2~3日に迎えた今季最終戦では、予選からタイトル候補が緊張感漂う動きを見せる。

 そのファーストアタックとなったQ1では、名門トヨタ・チーム・アルゼンティーナ(TTA)のエースに復帰したラヴァーが同郷アルゼンチンの先輩として意地を見せ、序盤からトップタイムを記録。対照的に国内最高峰TC2000でもタイトル候補に成長してランキング3位となり、今季より本格的なTCR進出を果たしたモンテネグロは7番手から5番手にアップするのが精一杯と、シーズン終盤戦から続く“王座挑戦へのプレッシャー”が伸し掛かる。

 続く10分間のQ2でも、モンテネグロと僚友ファビオ・カサグランデ(スクアドラ・マルティーノ/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)が最初にコースインしたが、基準タイムを計時したのは前戦勝者ガリッド・オスマン(W2プロGP/クプラ・レオン・コンペティションTCR)となり、残り90秒で鈴木とカゼッラが立て続けに最速を更新。

 そこへラヴァーも絡む展開となり、最終的にカゼッラがポールポジションを獲得。フロントロウ2番手に鈴木、2列目3番手にラヴァーとオスマンが並び、モンテネグロは6番手で明日のオープニングヒートを迎える状況となる。

 日曜現地時間9時10分に開始されたレース1は、スタートでポールシッターが出遅れると鈴木がリードを奪い、2番手オスマンの背後でラヴァーが揺さぶりを掛ける展開に。一方でモンテネグロも出遅れ序盤は13番手まで沈む厳しいレースを強いられる。

予選では地元ブラジル・シリーズ登録で国内戦に挑むファン-マヌエル・カゼッラ(スクアドラ・マルティーノ/FL5型ホンダ・シビック・タイプR TCR)がポールポジションを奪う
レース1ではラファエル鈴木(PMOモータースポーツ /リンク&コー03 TCR)がスタートで首位に立つ
地元のSCBストックカー・ブラジル“プロシリーズ”でも活躍するラファエル鈴木「こうして素晴らしいチャンスを活用して勝てたのは最高だ」

■8位死守のモンテネグロが初チャンピオンに輝く

 中盤の15周目には最前列発進だったカゼッラのFL5シビックRがバリアに衝突し、セーフティカー(SC)が導入されると、コース補修が長引き残り1分を切った20周目にようやくグリーンとなる。

 リスタート後も首位3台は全員がポジションを守り切って鈴木が勝利を奪い、オスマン、ラヴァーのポディウムが確定。一方のモンテネグロはファイナルラップの奮闘で7位まで挽回してチェッカーを受け、ここでチームタイトルを確定させる働きで、週末のハードルをひとつクリアしてみせた。

「こうして素晴らしいチャンスを活用して勝てたのは最高だ」と喜びを語った鈴木。

「このチャンピオンシップは非常に競争が激しく、浮き沈みの多いシーズンだったから、このレース結果にはとても満足している」

 続いて現地時間12時40分に迎えた2023年最終ヒートのレース2は、序盤のダメージから回復し切れなかったカゼッラがフォーメーションラップの終わりにピットへ向かう幕開けに。

 その僚友カサグランデのFK8シビックも、リバースポールからの蹴り出しで遅れペドロ・カルドゥソ(ヒョンデN・チーム・スクーデリア・キアレッリ/ヒョンデ・エラントラN TCR)やファン-アンヘル・ロッソ(パラディーニ・レーシング/トヨタ・カローラGRS TCR)、そしてヌネスのカローラに先行を許してしまう。

 オープニングラップを経てカルドゥソのヒョンデもピットでリタイアを選択したことから、早くも2周目にはヌネスがリードを引き継ぎ、タイトル候補のラヴァーが4番手、モンテネグロは6番手のオーダーとなる。

 前方オスマンのクプラを追うティーンエイジャーだったが、背後には午前のウイナーである鈴木とラファエル・レイス(W2プロGP/クプラ・レオン・コンペティションTCR)が迫り、20周目には接触バトルの余波で2台立て続けのオーバーテイクを許し、ここでFK8シビックは8番手へと後退してしまう。

 そのまま28周のチェッカーフラッグでヌネスが勝利を挙げ、ロッソとファビアン・シャナントゥオーニ(パラディーニ・レーシング/トヨタ・カローラGRS TCR)が続いてTGRAが表彰台を占拠する結果に。そして4位のラヴァーに対し、終盤は油圧の問題にも苦しんだモンテネグロはなんとか8位を死守してゴール。ドライバーズタイトルを確定させるのに充分なポジションで走り切って、自身の肩書きに“南米チャンピオン”の称号を書き加えた。

「最終ラップは本当に難しくて、クルマをドライブするのはほぼ不可能な状況だった」と、フィニッシュ後には困難な状況にあったことを明かした18歳の新チャンピオン。

「でも今季は、一緒にチャンピオンシップを勝ち獲ってくれたチームに心から感謝したい。誰にとっても非常に良いシーズンになったね!」

レース2ではTOYOTA GAZOO Racingアルゼンティーナ謹製のトヨタ・カローラGRS TCRが1-2-3-4体制を築く
「トヨタでの2勝目。とても暑く難しいレースだったが、良い週末になった」とレース2勝者ディエゴ・ヌネス(コブラ・レーシング/トヨタ・カローラGRS TCR)
タイトルへの重圧、終盤のトラブルで疲労困憊のチェッカーとなった新王者イグナシオ・モンテネグロ(スクアドラ・マルティーノ/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)

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