シニア犬の『薄毛』は放置してはいけない?病気の可能性や自宅でできるケアを解説

シニア犬の「薄毛」の病気の可能性

シニア犬になると、しっぽの毛のボリュームがなくなったように感じられるなど、体の一部分が「薄毛」になることがあります。また、全体的な薄毛によってボリュームがなくなり、ふんわり感やモフモフ感が失われたように感じられることもあります。

しかし、皮膚が丸見えになるほどの薄毛になることはありません。皮膚が丸見えになるほどの抜け毛がある場合、老化現象による薄毛ではなく、おそらく脱毛という症状です。

では、シニア犬の「薄毛」にはどのような病気の可能性があるのか、詳しく解説しましょう。

甲状腺機能低下症/h3>シニア犬の薄毛の病気の可能性として、「甲状腺機能疾患」が考えられます。甲状腺の機能が低下し、甲状腺ホルモンの分泌が不足する病気です。とくにシニア犬によく見られます。甲状腺ホルモンは、犬の生命活動に欠かすことのできないホルモンで、エネルギーやタンパク質や脂質などの代謝に深く関わるホルモンです。この分泌が不足すると、犬の体への影響が大きく、皮膚が乾燥しやすくなったり、被毛が荒々しくなったり、薄毛になるなどの症状があらわれます。この場合の薄毛の症状は、初期段階で見られると考えてよいと思います。さ薄毛の症状に加えて、急に体重が増えた、元気がない、寒がりになった、皮膚の黒ずみができたなどの症状が見られるときは、動物病院で診察を受け、適切な治療を受けましょう。クッシング症候群シニア犬の薄毛の病気の可能性として、「クッシング症候群」が考えられます。これは「副腎機能疾患」とも呼ばれますが、副腎という器官から「コルチゾール」というホルモンの分泌が過剰になる病気です。代謝に深く関わるホルモンで、様々な症状を引き起こします。飼い主にも気づきやすいのは、薄毛の症状の他にも、「水を大量に飲む」「おしっこの回数や量が増える」「呼吸が早い」「お腹が膨らむ」「皮膚が黒ずむ」などの症状が見られることもあります。8歳以上のシニア犬によく見られる病気だとされており、好発犬種もあります。薄毛と多飲多尿の症状が見られるときは、すぐに動物病院へ行きましょう。アロペシアXシニア犬の薄毛の病気の可能性として、「アロペシアX」が考えられます。「偽クッシング症候群」とも呼ばれている病気で、薄毛や脱毛の症状が見られるものの、痒みを伴わないという特徴があります。痒がるのであれば「皮膚病かも…」とすぐに疑うことができますが、痒みが伴わないとなると、薄毛の症状にはなかなか気づけず、ひどい脱毛の症状が見られてから気づくことがあります。2歳~3歳の若い犬に発症しやすい病気とされていますが、シニア犬になってから発症することもあるとされています。シニア犬になって初めて発症したというよりも、若いときから症状はあったものの軽度で気づけず、シニア犬になって重症化したことで気づいた、ということなのではないかと思います。好発犬種にはポメラニアンがあり、「ポメハゲ」と呼ばれることもあります。薄毛が見られる部位は、しっぽ・おしり・お腹です。薄毛や脱毛の症状以外には、皮膚の黒ずみの症状もよく見られます。シニア犬の薄毛に自宅でできるケアシニア犬になると、ホルモンの分泌量が変化したり、バランスが乱れたり、免疫力や抵抗力が低下するなどし、薄毛になることがあります。そんなシニア犬に最も大切な自宅でできるケアは「シャンプー」と「ブラッシング」です。被毛や皮膚を清潔に保ち続けるとう目的があります。体質の改善を目的とした「食事療法」も良いのではないかと思います。愛犬に不足している栄養素はないか、逆に摂りすぎている栄養素はないかなど、食事の見直しをしてみましょう。また、シニア犬が薄毛になると、寒い季節の体温の調節や維持が難しくなることがあります。寒がるようであれば、防寒対策として、服を着せることが必要になることもあるかと思います。動物病院の行き帰りやお散歩に行くときなど、寒さ対策を万全にしてお出かけくださいね。まとめ【写真4:皮膚が黒く薄毛のポメラニアン】533519010シニア犬の薄毛の病気の可能性を3つ解説しました。甲状腺機能低下症クッシング症候群アロペシアX病気による薄毛に加え、シャンプーやブラッシングの不足によって薄毛の症状を悪化させてしまうことがあります。老犬になると、健康面や安全面を考え、シャンプーを控えることもありますよね。嫌がるブラッシングを無理にするのは…ということもあるかと思います。若いうちからシャンプーやブラッシングなど、皮膚の健康のために必要な自宅でできるケアに慣れておくようにしましょう。(獣医師監修:寺脇寛子)

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