まずは『食事処』から…復旧作業本格化 土砂災害から1年2カ月…再開までの軌跡(4)静岡市 /ニュースの現場

6月…

お客さん「わーおいしそう」
大塚郁美さん「炊き合わせの緑の器は、折戸ナス。あとお肉は静岡産牛のローストビーフをサラダ仕立てにしまして、なるべく地元のものを使っています」

ここは、古民家を利用して4月にオープンした観光カフェ「オクシズベース」。この施設の立ち上げメンバーの1人から、旅館休業中の大塚さんの収入源になればと、6月末までの週末限定でランチの営業を依頼されたんです。油山苑の常連客を中心に毎週多くの予約が入りました。

お客さんA「品数が多い。油山苑さんの朝食を思い出します」
お客さんB「酢の物も酢の加減がやさしい。多分作られている方がやさしい気持ちの方なんじゃないかな」

大塚祐史さん:「旅館をやっていたころは、私は厨房にずっと閉じこもって作っていたので、お客さんの顔を見ることがあまりなかったんですけど、オープンスペースで営業しておいしそうに食べている顔を見せてもらった。非常にこれからの励みになります」

お客さんと会話をしながら料理を提供することは、大塚さんにとって新鮮な体験でした。

クラウドファンディングは目標額を大幅に上回り

5月上旬から挑戦していたクラウドファンディングには、1カ月半で、当初の目標の300万円を大きく上回り、565万円もの支援金が集まりました。

同時に進めていた、再建のための補助金の手続きも終了。そして8月下旬…

大塚祐史さん:「ここが厨房で、やっと改装の工事を始めたところです。宿泊業を再開する前に、食事だけでもとってもらえるように、半分はテーブルを入れて、お客様に食事してもらえるようなレストラン方式というか、そういう形にしていきます」

料理提供の再開目指し

オクシズベースでの営業に手ごたえを感じた大塚さん。厨房だった場所をオープンキッチンの食事処に改装し、11月に料理の提供から再開する計画で工事を始めました。災害発生から1年経った9月下旬には、新しい冷蔵庫や流し台などが厨房に搬入されました。

大塚祐史さん(お皿の仕分け作業):「泥をかぶらずに生き残った器です。昔の皿もあったのでいい機会なので処分するものはするで、ちょうどいいです」

営業再開の目途がつき、流されずに無事だった食器類の仕分け作業に、1年経ってようやく取り掛かかることができました。

郁美さん「これはみんながきれいに洗ってくれたのかな?」
大塚さん「ご飯茶わんです」
郁美さん「これを焼いて作ってもらったら、お客さんからすごく好評だったんです。いろんなお客様との思い出というのが 器を通して思い出すというのがすごいあります。なかなか思い切りがなくて、手が止まっちゃいます」

大切な思い出が詰まったお皿。仕分け作業は数日間続きました。それからひと月後の11月1日、厨房・食事スペースの改装が無事に終了。あの日土砂が押し寄せたロビーもきれいに生まれ変わりました。

© 静岡朝日テレビ