木陰・朝蔭通巻900号に=終戦直後創刊、日系最古の俳誌

木陰・朝蔭通巻900号

 佐藤念腹氏が創刊した日系社会最古の月刊俳句誌『木陰』。その後継誌『朝蔭』がこの10月に通巻第900号を迎えたのを機に、現在の編集者の佐藤寿和(すわ)氏に話しを聞いた。
 「私はバストスで戦後に生まれたブラジル育ち。日本語はバストス週報の小田糸音(しおん)さんから教わっただけ。『一生懸命勉強して、ちゃんと日本精神を身に着けて』と励まされて、なんとか覚えました」と振り返る。結婚後、30歳過ぎで夫と共にサンパウロに出た。

佐藤寿和氏(2015年の念腹忌大会で撮影)

 『木陰』は75年前、終戦直後の1948年に念腹氏が創刊した。当時は勝ち負け抗争が生々しい時代だった。戦前、高浜虚子が愛弟子の念腹氏の渡伯に際して贈った餞別句《畑打って俳諧国を拓くべし》の通り、念腹氏は地方の俳句会を巡回して回り、多くの直弟子、孫弟子を育て上げブラジルに数千人の〝俳句王国〟を築き上げた。
 その取組みの結晶と言えるのが月刊俳句誌『木陰』で、372号まで発刊した。念腹氏が亡くなったことから、末弟の佐藤牛童子氏が引き継いで『朝蔭』を1979年に創刊。牛童子氏が2011年5月に亡くなってから、未亡人の寿和氏が引き継いで、900号に到達した。
 寿和氏は「毎月の編集作業は大変ですが、主人から『俳句を粗末にするな、バチが当たる』といつも言われていました。新しく俳句の勉強を始める人の参考になるようにと、ポツポツと出しています」と謙遜する。
 さらに、「日本の俳誌『九年母(つくも)』の皆さんから『ブラジルで花鳥風月の旗印を掲げ続けてほしい』と励まされておりますので、ボヤボヤしておられません」とほほ笑んだ。

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