あすから国際賢人会議 長崎県で開催 「廃絶への具体的な道を」

 核保有国と非保有国双方の有識者が、核兵器のない世界への具体的方策を議論する「国際賢人会議」の第3回会合が8、9両日、長崎市で開催される。米国の「核の傘」に安全保障を委ねる日本政府が双方の「橋渡し役」として主催。ロシアのウクライナ侵攻や、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘を巡り核情勢が一層悪化する中、核軍縮や廃絶に向けた道筋は描けるのか。現状をまとめた。
■核軍拡傾向
 長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)の推計で世界の核弾頭は1万2520発。核大国ロシアはウクライナ侵攻で核の威嚇を繰り返し、隣国ベラルーシにも核を配備。米国など先進7カ国(G7)はこれを「無責任」と非難しつつ、自らの防衛目的の核抑止力は正当化する。
 さらにイスラエルの閣僚がハマスとの戦闘で核使用を「選択肢の一つ」と発言するなど、核を巡る国際情勢は緊迫。「実質的な核軍拡傾向」(レクナ)で核抑止依存は強まり、核拡散防止条約(NPT)も昨夏の再検討会議が決裂するなど閉塞(へいそく)感が漂っている。
■保有国不在
 こうした状況に非保有国の不満が高まり、2021年発効の核兵器禁止条約は69カ国・地域が批准。1日まで開かれた第2回締約国会議では、核抑止論からの脱却などを求める政治宣言を採択した。
 ただ核保有国や、米国の「核の傘」に頼る日本などは不在。同じ傘の下にあるドイツなどはオブザーバー参加したが、日本政府は「核兵器国が参加していない」として不参加の立場を崩さない。かねて岸田文雄首相は「現実的かつ実践的な取り組み」の重要性を主張しており、その具体的な議論をする場の一つが「国際賢人会議」だ。
■検討を加速
 委員は核政策の実務経験者や研究者ら15人で、米ロなど核保有国からも参加。26年のNPT再検討会議に向け成果文書をまとめる。昨年の広島、今春の東京に続く3回目の長崎会合は「検討を加速化させる」(外務省)議論の場となる。被爆者や市民との対話、原爆資料館訪問なども行う。
 レクナの中村桂子准教授は「被爆地開催を目的化せず、地域社会との対話を通じて核の非人道性に立脚した議論を」と求める。核情勢の緊迫化する中、核兵器を使わないリスク削減などの議論は必要だが「“対症療法”だけでなく、今こそ核保有国や『核の傘』国を巻き込み廃絶への具体的な道を示すことが必要」と強調。今後の成果文書について「出して終わりではなく、日本政府や核保有国などの政策転換に影響を与えてこそ意味がある」と指摘する。

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