fusen - 初のツアー千秋楽は下北沢Flowers Loftで行なう初のワンマンライブ! 着実に経験を積み諸行無常を生きるバンドの現在地

バンドをやってみたくて、そして路上ライブもやってみたくて

──まずは、fusenというバンドがスタートした頃のお話から聞かせてください。

林龍佑(Gt&Vo):高校2年生のときに3人それぞれが別々で音楽活動をしていて、ライブハウスで一緒になる機会があって。僕は当時、弾き語りをやっていて“バンドをやってみたいんだよね”みたいなことを言ったら、“やろうよ!”みたいな感じになって集まってくれて。

岡野創太(Dr&Perc&Cho):僕はその当時、キーボードが入った歌もののバンドを同級生と一緒にやっていまして。

上遠野日向(Ba):僕も高校の同級生とロックとかポップスをやってました。

林:それでこの3人で“路上ライブとかもやってみたいね”っていう話になって。岡野がカホンもできたし、ベースはエレキだけどアンプを用意して、僕はアコギで。3人でアコースティックで、地元の(栃木県)足利市や隣の佐野市とかによく出没してました。

上遠野:そのときはまだベースが僕ではなかったんですけどね。

──そしてオフィシャルサイトにある通り、2021年からこの3人でバンド活動をされているのですね。現在の主な拠点はどちらでしょう?

林:今は新宿ロフトに大変お世話になってまして、東京から地元の足利だったり、最近は大阪や名古屋にも行かせてもらっていますね。

上遠野:それこそ東京で、この体制になってのライブは新宿ロフトが初でしたね。2021年の秋ごろだと思います。

岡野:僕が進学もあって東京に住むことになって、僕の後に上遠野も上京してきて。それまでは足利と行き来しながらバンドをやってたんですけど、“東京でもライブがやれるし、東京でのライブも出たい!”って思って。それから東京でのライブも出させてもらえるようになっていきました。

──なるほど。そこから昨年はアルバムのリリースがあったり、音楽活動が充実してきましたよね。

林:そうですね。アルバムもあったし、初めて仙台や大阪だったり遠くにライブに行ったり。いろいろあったなと思う1年でした。

岡野:曲が初めて(TVドラマのエンディング曲として)タイアップという経験も、音楽に大きく携わっていくという機会になったなと思います。

林:タイアップと言えば、今年に入ってカップスターとのタイアップもありまして。東京藝術大学の現役大学生がMVの監督をしてくれてコラボレーションするというもので、すごく良いMVができましたし、楽しい経験でした。【註:サンヨー食品株式会社が販売する「カップスター」の音楽と映像プロジェクト『NEXT GENERATION NEXT CREATION』の特設サイトはこちら】

──「星の名前」(2月リリース)のMVですね。同世代と一緒に作品を作るのは良い刺激になりましたよね?

林:映像と音楽という違いはありますけど、勉強にもなったし、本当に刺激になりました。(振り返って)去年から、いろんなことが始まっていった感じはすごくありますね。

──去年から続く形で駆け抜け続けて、今年は振り返るとどんな年でした?

林:すごく感じているのは、人と関わる・人と繋がるということがすごく多かった1年でした。去年、対バンした人たちやイベントに関わる方々と今年も対バンをしてすごく仲良くなったりいろんなお話ができたりして、そこからまた“こうしようよ!”って言ってもらえたり、去年(の状況)からまたさらに、今年はもっと広がったなという年でしたね。

上遠野:今年はツアーができるようになって(現在)ツアー中で、ツアータイトルが『変わる、変わる。』なんですけど、僕らにとってもこの1年は新宿ロフトに毎月出させてもらったりだとか、『風とロック芋煮会 2023』(福島県)といった大きなイベントに呼んでいただけるとか、fusenにとって大きな出来事があった1年でした。それこそツアータイトルじゃないですけど、変化する1年だったのかなと思いますね。

岡野:ここ数年(コロナ禍で)、目立った活動ができる機会っていうのが少なくて。ライブも“自粛しようね”みたいな感覚でしたし、その上で今、オープンに活動ができますってなってから、何だろう…活動する環境が開けてきたところもあると共に、僕の心の部分でも、開けた部分があって。1回(ライブ等で)会った人に、前まではそんなに話せなかった自分がいたんですけど、今は“ちょっと話してみよう”みたいな感じで、話してみるとどんどん話せる。それで連絡を取り合ってまた会うことができるのが僕にとって、“これがバンドをやっていて楽しいことの一つなんだ”って思える年になって、個人的にワクワクできることでした。

fusenというバンドそのものが「変わる、変わる。」

──ツアーのお話が出ましたが、「変わる、変わる。」は最新曲のタイトルでもありますね。

林:リリース曲は全て僕が曲を作ってバンドアレンジは皆でやる形で作っていて、この曲もそうなんですけど、この曲は歌詞が出来上がってから「変わる、変わる。」のタイトルを付けましたね。去年から本当にいろんなことがあって…自分が地元から引っ越したこともそうですけど、友達が皆、東京とか遠い所に引っ越したりして地元に友達が全然いなくなっちゃったんです。それで、みんな大人になるということについていろいろと考えて…それぞれ自分の道を行ってるんだなと思ったりしたし、22歳ぐらいの年齢ってちょうど、お別れが出てくることが多いなと思って。家で家族がいる風景とかもだんだんなくなったりして、“これから大人になるんだな”っていう思いと、これからはこういうことの繰り返しで変わっていくんだなと思って、この歌詞を書きました。

──少ない音数の楽曲で、だからこそなのか、歌詞がすごく入ってきます。春先・旅立ちのシーズンに聴かれ続けていく楽曲になりそうな気がしますね。

林:ありがとうございます。音数に関しては、3ピースバンドなので音を入れすぎるのもどうかなと思うし、やっぱり歌・言葉が一番聴こえるように作っていますね。

上遠野:林の声は唯一無二なので、それを際立たせたいっていうのは曲(のアレンジ)を作っていても思いますね。

岡野:歌っていうのはやっぱりバンドとして一番重視したい部分ではあって、僕自身のドラムにしても歌がどう聴こえるかなっていうのを考えながら叩くようにしています。それと「変わる、変わる。」に関しては、上遠野がキーボードの音を入れたりしてね。

上遠野:小学校のときにピアノを習っていたのでそれを活かしてやってみました。

──鍵盤もそうですし、ギターの音もノスタルジックな雰囲気が感じられて。上の世代も気持ちがグッと引っ張られる一曲に仕上がっていますよね。

林:僕はもともと、お祖母ちゃんにギターを教えてもらったんですよ。お祖母ちゃんが出してくる楽譜やスコアがフォークソングが多くて、それを弾いてお祖母ちゃんと歌うっていうのをやっていて、そのせいで曲に(懐かしいような)匂いがするのかもしれないです。

──そうだったんですね、素敵なエピソード! ちなみに影響を受けた音楽やバンドなどもお一人ずつ教えてください。

林:中学に入ってからは、同級生に薦められたBump of Chickenが好きになって、今も好きですね。

上遠野:fusenに入る前の別なバンドにいたとき、最初はキーボードの予定だったんですけど“ベースがいない”ということになって(笑)。それで高1からベースを始めたので、そのときはゲスの極み乙女やRADWIMPSだったりをすごく聴いてましたね。

岡野:僕はビートルズが家の中でも車でも鳴っているような環境だったんです。ローリング・ストーンズやザ・フーとか、親の影響でほとんど洋楽のロックばっかり聴いてて、“そんなにロックを聴いてるなら音楽やりなよ!”って言われて。打楽器が好きだったし、小4からドラムを習い始めました。それで自分から聴いたバンドは邦楽だと、ASIAN KUNG-FU GENERATIONやサカナクションで、ライブ映像を見てますます“ドラムをやりたい!”っていう感じになっていきましたね。あとはチューリップとかも聴いたりしてました。

林:僕もお祖母ちゃんと一緒にガロをよく歌ってました。

どれだけ自由にライブをやれて、どれだけ自分たちを見せられるか

──昭和のフォークソングなどもルーツにはあるのですね。ではお話を戻して、現在進行中の東名阪3カ所のツアー、大阪・名古屋でのライブはいかがでしたか?

林:育ってもいないし行ったこともない場所で歌う、しかも新曲を聴いてもらうっていうのはメチャクチャすごいことだなって思って、“これから歌いに行くんだ!”って行く前から、そして移動の車の中でもワクワクしてました。いろんな方々にも褒めてもらえて、それが年齢が上の方も多くて。CDを会場で手に取ってくださった方もいたし、間違いなく届いてたんだろうなと思えて嬉しかったですね。

上遠野:初めてのツアーなので、ツアーってどんなものかも分からなくてちょっとした怖さもありつつ大阪と名古屋に行ったんですけど、僕は初日の大阪は後悔が残るライブになってしまったんですね。反省として、ちょっとした怖さから自信のなさが出ちゃったかな…って、客観的に見て思ってしまって。それで次の日の名古屋はその反省を活かしつつライブをやったら自分でも自信がつくような良いライブができたので、ライブの見せ方や聴かせ方というのを勉強できたツアーでもあるなと思ってますね。

岡野:まずは遠くに行くというだけでも気分が盛り上がりながらプラスアルファで、自分たちがしっかり見せたいものがあって行く。“大阪に行って美味しいものを食べよう”では済まない、遠征とかツアーの本来の気持ちってこうなんだろうなというのを感じました。それがこれから、たとえばアルバムが出来てアルバムを持ってツアーを回るっていう将来の話に繋がっていくんだなと思ったし、上遠野も言った通りで“自信を持つ”っていうのがすごく大事になるんだなと。僕も大阪では空気感に押されてしまったんです。でもそれを名古屋では“しっかり自信を持つ”っていう意識で臨めて、成長にも繋がったと思ってて。これが「変わる、変わる。」という曲を持っていった意味でもあり、自分の中で変わった部分なのかもしれないと思えました。

──そしていよいよワンマン公演でのツアーファイナルです。ファイナルに向けた意気込みなどをお一人ずつ聞かせてください。

林:できるだけ自由に、自分たちそのままの人間で自分たちがやりたいことをやって、それを見ていただけて“いいな”と思ってもらえるようなライブをしたいなと思ってます。対バンだと30分とかのセットリストになってしまうんですけど、今回は、自分たちの好きな曲をできるだけ長く、いつもとは違う曲順でもできたりするので、頑張りたいなと思ってます。

上遠野:林と同じように、まずは自由に。それが一番大きなところで、あとワンマンなのでライブの見せ方にしても長く、自由に披露できる日だなと思っていますし、「変わる、変わる。」のツアータイトルだからこそ、どれだけfusenが自由にライブをやって、どれだけ見せられるか。その上で、fusenはどれだけ変わったのかというものを見せられたらと思っています。

岡野:自主で、ワンマンでのライブというのが初めてなんです。経験したことがないですし、“ワンマンってどうなんですか?”っていろんな知り合いに聞きながら探求できていて、ワンマンってそれだけ特別だなと思ってますし、その特別なものをやるために練習に入って、またさらに特別なものにしていけるかというのを考えている今日この頃ですね。30分のセットリストには慣れてきているところがあるんですけど、ワンマンは初めてだからリハーサルも一つ一つ、すごく大事に時間を使えている実感があって。苦悩してます(笑)けど、楽しくリハに入って“この曲順にしたい”とか、意見がぶつかり合いながら話し合いができている。それは“こう聴かせたい”っていうお互いの譲れない意思があるからぶつかるわけで。そういうこともワンマンだからこそ出てくるなと思いながら、着々と今、頑張っているところです。

──“苦悩”という言葉が出ても、話す表情を見ていると楽しいほうが勝ってますよね。

岡野:そうですね。考えているときはどうしよう…ってなるんですけど、リハが終わった後は“あれ、良かったよなぁ”って思いながら電車に乗ってるので(笑)。

──そして今回、なんと初ワンマンでしたか。それは大事な1日ですね!

上遠野:はい、すごく大切な日です。

林:いつも来てくれてる方はもちろん来て欲しいですし、本当にたくさんの方に見に来て欲しいです。

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