許せない…ネットに部落地域の写真掲載、表札・車ナンバー・墓石も撮影 住民男性ら、サイト公開している出版社を提訴「煮えくり返る思い」 出版社の代表「訪れてレポートしただけ。差別じゃない」

さいたま地裁=さいたま市浦和区高砂

 川崎市の出版社「示現舎」がウェブサイトに埼玉県内の被差別部落地域を訪れた写真などを公開するのは憲法が保障する「差別されない権利」などに反するとして、熊谷市の70代男性と部落解放同盟埼玉県連合会は6日、削除と計660万円の損害賠償を求める訴訟をさいたま地裁に起こした。

 同サイトを巡っては大阪府の男性が先月、記事削除を求める仮処分を大阪地裁に申し立てており、提訴は今回が初めて。

 訴状などによると、示現舎はサイト上の「人権探訪」と称されたカテゴリーの記事内で、県内の被差別部落地域の住宅表札や車両ナンバー、墓石などを掲載。これが部落差別を拡大助長させているとして、差別されない権利や同連合会員の人格権などの侵害を主張している。

 同県連合会や代理人弁護士などによると、同サイトでは2015年ごろから同種記事が公開され始め、現在では全国各地約340地域の被差別部落地域の写真や動画が公開されている。県内ではこれまでに13市町の19地域が取り上げられており、その中には原告男性が居住している地域も含まれていた。

 原告男性は同日行われた会見で、自分が住む場所が部落地域にあることを不特定多数に発信されたとして「記事を見た時に煮えくり返る思いがした。許されない行為だ」と憤慨。同県連合会片岡明幸執行委員長は、直近数年間で同様の活動をしている別の発信者の存在を明かした上で「記事によって当該地域の方々が差別されるのではないかと恐れている。見過ごさずに歯止めをかけることが一番の目的」と語った。

 示現舎の代表男性は取材に対し、同サイトの一連の記事について、部落地域を訪れてレポートしているだけで、差別に当たるとは考えていない旨を話した上で「詳しくは訴状が手元になく分からない」とした。

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