ついに『食事処』オープン プラモデルの作業部屋も用意 土砂災害から1年2カ月…再開までの軌跡(5)静岡市 /ニュースの現場

去年9月の土砂災害発生から1年1カ月。11月4日、旅館 油山苑は食事処のオープン初日を迎えました。

大塚祐史さん:
「これ松茸です 椀物の椀ダネになります」
「これカツオですね たまたま戻りガツオが入ったらしくて」

大塚さんの母、トミ子さん
「これ私の柚子。(樹齢)40年ぐらい」

久しぶりの営業、母・トミ子さんも気合十分です。料理は前菜からデザートまで全部で9品のコース仕立て。大塚さん、仕込み忘れがないかチェックに余念がありません。そして、お昼の開店前。玄関にのれんを掛けます。

大塚祐史さん:「泥にまみれていたものを、知人のイタリアンのシェフが漂白クリーニングしてくれて、泥の中から引っ張り出して、『あったよ』って見せてくれて その時はドロドロでした。せっかくきれいにしてもらったので、これを大事に使おうと。きょうからまた始まりです」

この日は、昔からの常連客3組から予約が入りました。新しい油山苑での食事は…

お客さん
「前と変わらずおいしいです。器もすごく素敵だった」
「話をしながら食事をできるというのは、いいね」
「ゆっくりお料理も味わえて」
「できたてをすぐにね」

伊地アナもいただきました

そのお料理、私もいただいてきました。

伊地健治アナウンサー「本当に見た目からして美しさと、華やかさがありますけど、これはどういう前菜?」

大塚さん「手前が静岡産牛のローストビーフ。その横が石川芋のコロッケ、サトイモの一種ですね。裏ごしして中にチーズ入れて生ハムを巻いて揚げてある」

こちらは、春菊とむかごが入った自然薯のおひたし。

伊地アナ「おいしい。春菊と自然薯って合うんですね。滋味深いといいますか」

焼き物は「鶏の塩麹焼き」。塩漬けした柚子をすりおろした「塩柚子」を付けていただきます。

伊地アナ:「目の覚めるような、ゆずの刺激といいますか酸味がぱーっと広がって、鶏肉と合いますね」

お客さんの直の声が聞こえるオープンキッチンに

以前は大広間や個室で食事を提供していたそうですが、今回はお客さんの顔が見えるオープンキッチンにリニューアルしました。

大塚さん:「私もこういう形、未経験でちょっと恥ずかしいんですけど、まだ慣れなくて、だんだん慣らして、でもお客さんの直の声が聞けるので非常にためになってありがたいことです」

宿泊の再開は、来年1月中旬予定。現在、客室の改装が着々と進められています。

プラモデルの作業部屋も

伊地アナ「きれいだ。まだ工事の途中で道具も置いてありますけれども、フローリングが貼ってあって広々としたいい部屋ですね、ここは元々何の部屋?」

大塚さん「以前はお食事していただいたり、学生団体さんが来た時に宿泊部屋にしていたんですけども、ここも災害にあって泥まみれだったので、改装するとともにプラモデルを、昔から合宿なんかを受けていたので、いっそここを作業部屋にしてしまおうということで」

こちらは、モデラーがプラモデル作りに没頭できる部屋になる予定です。

温泉再開は断念

続いて案内してもらったのは、離れにある浴場。こちらは幸いにも土砂の被害はなかったのですが…。

伊地アナ「これは温泉なんですか?」
大塚さん「前は温泉だったんですけども 去年の災害で源泉が埋もれてしまいまして、ほとんど出なくなった」

油山苑の自慢の1つだった温泉の再開は、果たせなかったんです。

大塚さん:「大きいお風呂で、足を伸ばしてリラックスしていただくのも1つかなと思いまして、今考えているところです」

これまでの人生を一変させた土砂災害。大塚さんを旅館再建へと奮い立たせたのは、人との絆でした。

大塚祐史さん:「ここが災害に遭ってからいろんな方に助けられ、その都度、声を掛けていただいて励まされ、本当に人の温かい心に触れたというのが一番です。その言葉がなければ、こうしてまた再開してやろうかなという気持ちも全然起きませんでしたし、心から感謝してお礼を言いたいです」

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